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ツイッターでも話題の、こさささこさん『ある日突然オタクの夫が亡くなったら?』をきっかけに、村井さんは「2019年最初の仕事は、私物の整理にしよう」と決意。
先ごろポルトガルから来日した作家が日本の作家と語り合った貴重な対談。歴史の話、土地の話、そして犬の話にもお話が広がります。
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2月1日(金)
昨年亡くなった装幀家の多田和博さんの事務所「フィールドワーク」のTさんやOさんと会う機会があり、私が長年担当していた橋本治さんが数日前に亡くなった話をする。TさんやOさんも、一年経っても多田さんが亡くなったことを受け入れられないという。

精神科医のエリザベス・キューブラー=ロスは『死ぬ瞬間—死とその過程について』の中で、死の受容には5つの段階があると書いている。

(1)否認 自分が死ぬということは嘘ではないのかと疑う段階。
(2)怒り なぜ自分が死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階。
(3)取引 なんとか死なずにすむように取引をしようと試みる段階。
(4)抑うつ なにもできなくなる段階。
(5)受容 自分が死に行くことを受け入れる段階。

の5つだが、これは意外と、残された人間も同じではないのか、と話す。

亡くなった人に思っても詮無いことなのに、「何してくれてんねん」というような、「怒り」に似た感情が残っていると言う。つくづく「怒り」は「愛情」の裏返しである。

多田さんのお仕事をふりかえる「多田和博仕事展」が、2月19日から銀座第7ビルギャラリーでひらかれるそうだ[東京都中央区銀座7-10-16、2/19(火)〜22(金)10:00-18:00]。

2月5日(火)
町屋良平さんの芥川賞受賞作『1R1分34秒』が好評で、売れ行きもいいらしい。

2016年に『青が破れる』で文藝賞を受賞してデビューした町屋さん、わずか2年あまりで見事な飛躍だと思う。

デビュー作の『青が破れる』は三島由紀夫賞候補にもなり、二冊目の『しき』は芥川賞と野間文芸新人賞の候補、そして三冊目の『1R1分34秒』で芥川賞を受賞した。全ての単行本が何らかの文学賞の候補作になり、いつの間にか存在感のある小説家になっている。

町屋さんの小説は、大まかにいえば青春小説的な性格が強いのだが、50歳近い私が読んでも、もう自分には遠い世界だという感じがしない。平易な言葉が使われていて、すっと文章にのれる。読んでいて気持ちが良くなる。

小説ばかり読んでいる好事家みたいなタイプと、あまり小説を読まないタイプの両方が「この小説いい」と言う。似ている作家がいそうでいない。

雑誌「新潮」の担当編集者と単行本の担当編集者は、同期の名コンビ。手前味噌だが、装幀はかわいいけど甘すぎず、温かみとユーモアがあって、帯には煽るようなコピーがない。手元に置いておきたくなる本だと思う。

「新潮」新人賞出身で同時受賞の上田岳弘さんについては以前にも書いたが、今、もっとも大きな物語を紡ぎだせる作家である。『ニムロッド』での受賞、4度目の芥川賞候補だっただけにとてもうれしい。「Yahoo! JAPAN」と「新潮」に連載していた、代表作になるべき長篇小説「キュー」は、大幅に加筆して今年単行本になる予定。

2月7日(木)
安野モヨコさんの8年ぶりの新作漫画『鼻下長紳士回顧録』の下巻がついに刊行された。

20世紀初頭のあらゆる欲望をもった変態が集うパリの娼館を舞台に、娼婦のコレット、彼女を振り回すヒモ男レオン、高級娼婦ナナ、日本人の放蕩作家・栄らの人間関係が描かれる。

さくらん』の系譜のように思えるが、『鼻下長紳士回顧録』が描く人間の欲望と虚無の世界はもっと深くて暗い。冒頭近くに、こんな文章がある。

ここはメゾン・クローズ 売春宿だ
「でもまあそんなに最悪って程でもない」
3年ここにいる私の正直な感想
それともういっこ
この世の大抵のことは そういうプレイだって思えばしのげる

そのうしろに時々ぽっかり浮かんでくる
穴みたいな不安など
枕でふたして寝ちゃえばいい

まるで、安野モヨコさんがかつてアシスタントをしていた岡崎京子のような文章ではないだろうか。

しかし、安野さん、私と同世代のはずなのに、この老大家のような迫力は何だろう? 谷崎潤一郎や河野多恵子の晩年の作品を読んでいるかのような技術の高さと、生きることへの諦念とでもいうようななんともいえぬ淋しい感覚を感じる。
 
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