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村井家の息子さんたちの小学校卒業・中学校入学、そして知人のお子さんの受験と合格発表。子どもたちの成長を見守る春の感慨に共感の声が集まりました。
露店に並ぶ春の野菜の色。干したシーツが海風に翻る音。亡き親が持たせてくれた本の匂い…。たくさんのイタリア人たちの、それぞれの過去の重みと明日への思いが伝わってきます。
「コーヒーと天丼」という看板の出ているその店に入ると、まず女性週刊誌を2冊渡され…。異世界と懐かしさの間にある小山田ワールドをお楽しみください。
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3月16日(土)
埼玉に引っ越して約20年になる。

公開から1か月、まだ盛り上がっている映画「翔んで埼玉」をレイトショーで見に行く。いつもはすいている近くの映画館がほぼ満員。「さいたまポーズ」やら草加せんべいの踏み絵やら、細部でみんな笑う。こんなに県民愛が強いのかとびっくりした。

私の記憶では、魔夜峰央さんの漫画「翔んで埼玉」がはじめて話題になったのは、バラエティ番組「月曜から夜ふかし」である。「そこらへんの草でも食わせておけ! 埼玉県民ならそれで治る!」というセリフが取り上げられ、昔、こんな強烈な埼玉ディス漫画があったというような紹介の仕方だったと思う。

調べてみると、当時は絶版だったのが、この番組の反響が大きく、12月に復刊。それが60万部ぐらいまで増刷し、この映画化につながった。「月曜から夜ふかし」で取り上げなかったら、この映画の大ヒットも(もしかしたら、魔夜峰央氏の代表作「パタリロ!」の6月の映画化も)なかったのかと思うと、不思議な感じである。こういうのもバタフライ・エフェクトというのだろうか。

3月20日(水)
新潮講座のイベント「読む楽しみ、書く愉しみ −奥泉光の世界−」へ。講師は奥泉光さん、聞き手は読売新聞編集委員の鵜飼哲夫さん。

前半は、昨年、柴田錬三郎賞と毎日出版文化賞を受賞した『雪の階』の創作の秘密について。奥泉さんは「何を書くか」よりも「どのように書くか」に興味があり、この作品も、なかなか日本文学で難しい、三人称多元視点でのリアリズム小説をいかに成立させるかに興味があって書いたという。三人称多元視点だと、アイロニーは描きやすいが、どうすれば嘘くさくならないかが難しい。

後半は、読みの名手としての奥泉光さんについての話。『『吾輩は猫である』殺人事件』というパスティーシュ作品もあり、夏目漱石への強い関心のある奥泉さんは、『漱石漫談』(いとうせいこうさんとの共著)、『夏目漱石、読んじゃえば?』で、世に知られた漱石作品の読み方に新しい光をあててきた。例えば『坊っちゃん』を丁寧に読むと、この主人公は今でいえばコミュニケーション障害で、小説内でほとんど会話せず、清のことばかり考えているという。

どうすれば先入観なしに読めるか。おすすめは、とにかく、ゆっくり繰り返し丁寧に読むことだという。『草枕』がいい例だが、あの作品は漱石がおそらく一番気合入れて書いた作品で、一度読んだだけでは読んだことにならない。なるべくゆっくりと読んで、しばらくして気になったところを読み返して、とやっているうちに、良さがだんだん沁みてくる。何回も取り出して付き合っていく感じでで読むのがコツとのこと。

奥泉さんの話は、明解で淀みがなく、聞いていていつも明るい気持ちになる。

3月22日(金)
横山秀夫さんの『ノースライト』、面白かった。

もともと横山さんの短編小説が大好きだったが、そのミステリ性と主人公の葛藤を描く人間ドラマの融合が、長篇小説『64』で大きな果実となり、その延長線上にこの新作がある、と感じた。ブルーノ・タウトと関わりのある椅子の小道具の存在が洒脱だ。

横山さんの小説では、物語を牽引する謎が解けたあと、それによって主人公が見てきた登場人物の行動原理が奥行きをもって見えてくる。しかもそこに浮かびあがる登場人物の行動は、多くの場合ほろ苦い。エゴイスティックな動機よりも、誰かをかばって、という場合がほとんどだ。

ただ、この小説のラストはほかの小説に比べると、まだ希望が見えて明るい。そこに、横山さんの6年間が凝縮されているように感じた。

横山さん、以前と比べると寡作な作家になったが、その分作品がとてもパワフルで構造が強い。待つ甲斐のある、成熟した大人向けのエンターテインメント作家だ。
 
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