カンヌ国際映画祭で審査員賞に輝いた『そして父になる』や、2015年に公開されて大きな話題を呼んだ『海街diary』(Blu-ray DVDがさきごろ発売になりました)など数々の作品で知られる是枝裕和監督は、1962年に東京で生まれました。敗戦から17年の日本に生を受け、高度経済成長とともに大きくなったこの世代は、まだ途上国に毛の生えた程度だったころの日本の風景を記憶しています。そんな思い出の景色と、ちょっと遅く父親になった現在の心境とを絡めながら是枝さんが身辺雑記を綴る新連載が「空の虫かご」です。

果たしてこの連載タイトルは「そらの虫かご」なのか、「からの虫かご」なのか? 是枝さんは「空」の読みを明かしていません。そこは読者の解釈に任せたい、というのがその心のようです。

一方、タイトルに「虫かご」がある理由は推測できます。連載第一回には、子供の頃に暮らした練馬の家を囲んでいたヒマワリや朝顔やコスモスの姿とともに、青虫やトカゲの思い出が登場します。冬号(12月28日発売)掲載の連載第二回では、カンヌやセバスチャン映画祭のきらめきとある種の神聖さが語られたあと、後半では練馬の町の小さなお祭りが描かれます。「虫かご」は是枝さんの胸にいまも息づく「内なる子供」を象徴する道具なのです、きっと。家族が織りなす複雑な人間模様を丁寧に描き出す是枝監督の心のふるさとを垣間見ることのできる新連載にひきつづきご期待ください。