旺盛な執筆活動と並行し、「九条の会」呼びかけ人の一人として政治への異議申し立てと社会への働きかけを続けるノンフィクション作家の澤地久枝さん(85歳)。その溌剌とした姿から窺い知ることはできませんが、実は過去四度におよぶ外科手術を受けていらっしゃいます。

最初が1959年の心臓手術。再発して69年に二度目の手術。『妻たちの二・二六事件』で作家デビューした翌年の73年に子宮全摘手術。そして94年の心臓手術で僧帽弁を人工のものに置き換えました。体のあちこちに残る手術跡をみて「何たる無残な体か」と思うそうですが、その一方で、四度の外科手術は苦労ではなく、「それを受けることのできた幸運であった」とも。

「昔だったら、ないしは途上国で育っている子供たちには、無残などといえるような手術のチャンスさえないのですから。私は恵まれています」

そして、澤地さんは手術の度ごとに「人生やり直し」と考えて、勉強にいそしんだというのです。そして今も、「私はまだ知りたいことや勉強したいことがいっぱいあるの。本屋さんに言ったら、これもやっぱり知っておこうと思って買うんだけれども、いつ読めるかわからない。百歳まで生きたって読み切れるはずがないと思う」と笑います。

「人の命というのはもろいけれども、非常に強いものです。命は強い。やっぱり私は、人間の命のもろさと強さの両方がわからなきゃいけないと思う」――数多の苦難を経てノンフィクション作家が手に入れた実感。冬号のインタビューでぜひお読みください。