大量生産と工業化によって存在価値が埋もれかねない職人の技。連載「考える手」は、各地の様々な工房を探訪し、人間の手によってひとつひとつ生み出される名品をカラー写真とともに紹介するページです。
 第一回は「北欧の家具を再生する」。名作椅子を数多く送りだす国といえば、まずデンマークの名前があがります。なかでもYチェアで知られる家具デザイナー、ハンス・ウェグナーは、座り心地と美しさを兼ね備えた数々の名作で知られる巨匠です。しかし、ウェグナーの椅子は製造が中止されていたり、入手が難しいものも少なくありません。例えば一九五四年にデザインされたベア・チェア。なるほど正面からの風情はクマのようにも見えるソファですが、その年代物の椅子がいま世界的に再評価され、日本でも静かな人気を集めています。
 デンマークで買い付けられた古びたベア・チェアがどのように新品同様の名品として甦るのか。約半世紀前の職人の技を継承し、ときには改善もする現代日本人の技と知恵が、小さな工房のなかで細心にそして力強く展開してゆきます。
 今流通する一般的なソファの中身はウレタンですが、ベア・チェアの中には馬の毛が詰め込まれています。「ウレタンはせいぜい三十年の寿命だけど、馬の毛は百年以上持ちますよ」と説明する職人は、約五十年前に詰め込まれた馬の毛をふたたび自らの手で整えて、詰め直します。

 なお、創刊号では、この工房で復刻されたデンマークの幻の名作椅子(一九四九年、ヤコブ・ケアが国連ビルのためにデザインしたFNチェア)を特別価格で提供します。応募規定については創刊号をご覧ください。