見よ! この力強いフォルム。飯炊き道の基本は、この文化鍋だった。

「電子レンジ捨てるよっ」――そう宣言して、台所から大きな箱が姿を消したのが四年前のこと。いったい、平松さんちの台所に何が起こったのでしょうか?

 国内はもちろん、世界各地を駆けめぐり、思いがけない美味や素敵な器や台所道具を見つけて私たちに教えてくれる平松洋子さん。本誌ではすでに、東京・虎ノ門の割烹「つる壽」のご主人に日本料理の秘訣を聞く「『つる壽』味がたり」の聞き手としておなじみかと思います。そんな平松さんが、自身の企画として冬号から始める新連載、題して「台所でにっこり」。第一回は「ごはんを炊く鍋」です。

 便利なものを、何もかも否定するつもりはないけれど、できることなら、自分の五感を十二分に使って料理をしたい、台所に立つことを楽しみたい――あるとき、そんな思いに駆られた平松さんは、まずは電子レンジを追放することから始めました。じっさい、それからはシュウマイを温めるのも蒸籠を使い、ココアをつくるのも小鍋でゆっくりと。するとどうでしょう、思わず「おおっ」と声が出るほどに、味が、おいしさが、全然違っていたのです。

 そんな平松さんが次に目をつけたのは、十年間フル回転で使い続けた炊飯器。スイッチポンの便利さに甘えずに、お鍋でごはんを炊いてみよう! さて、その日から平松さんの長く熱くキビしい「飯炊き道」が始まったのでした。

 最高のごはんが炊ける理想の鍋とは? ごく身近な文化鍋から、アッと驚く高級鍋まで、探求の果てにはどんなお鍋が待っているのでしょうか?

「台所でにっこり」は、料理はもちろんのこと、お茶を淹れたり、お菓子をつくったり、台所と食卓を中心にしたなにげない毎日のしごとではあるけれど、それでも、どんな道具を使ったらもっと美味しくなるのか、どんな器に盛ったらもっと楽しくなるのか……「台所でにっこり」するために、あんまり肩に力を入れずに探っていけたら――そんな連載です。

 そうそう、まな板や包丁といった基本の道具からちょっと便利な小道具までをいっぱい集めた『台所道具の楽しみ』も、おいしい台所生活のための基本図書です。連載の副読本として、ぜひご一読を。