夏号の特集「建築家・中村好文が提案する『小さな家』」で取り上げたのは、こんな家です。

 第一部は、中村好文氏が設計し完成したばかりの浅間山麓の小さな山荘。「住まい」の原点、出発点といえる、縄文時代の竪穴式住居を思い起こしてください。土間の中央に石囲い炉がある。「食う寝るところ住むところ」がひとつ屋根の下に収まっている。いわばワンルームの原型です。そういえば、私たちが自然のなかでキャンプをするとき無性に気持ちが弾むのは、どこかで縄文時代の記憶が呼び覚まされるからでしょうか?

 浅間山麓の山荘は、そんな縄文時代の住まいの記憶が、静かに潜んでいるようなプランです。依頼主の夫妻は一番最初の打ち合わせで、「三和土のある粗末な家、みすぼらしい家にしてほしい」と中村氏に依頼しました。中村氏は検討の末、三和土=土間をこの家の真ん中に通し、そこへ薪ストーブを据えます。気温の下がった夜、ストーブに薪をくべて、テレビもラジオも何の音もしない空間で、火を見て過ごす時間……。

 第二部は、「小屋好き建築家」中村氏が選りすぐった古今東西の名作小屋を七つ紹介します。ヘンリー・デヴィッド・ソローの森の家、フィリップ・ジョンソンの書斎、ル・コルビュジエの仕事小屋、バーナード・ショーの執筆小屋、磯崎新のトゥリー・ハウス、武満徹の作曲小屋、鴨長明の方丈の庵……。それぞれ個性溢れる小屋でありながら、その所有者の精神のありかにはどこか共通するものがあるようです。「考えること」「ものを創り出すこと」のために、なぜ大きな家ではなく、小さな小屋が必要なのか。思索と創造の秘密にも迫ります。

 第三部は、中村氏がすでに完成させて数年経った都内の家が舞台です。依頼主は、家のどこかに新たに書斎を作りたいと希望しました。しかしその家には、書斎化が可能な部屋がありません。しかし中村氏は、盲点のようになっていた二畳強のわずかなスペースを見つけ出し、そこを書斎に見立て、改築に乗り出します。静かに集中できる場所はどのようにして見つけ出し、設計されたのでしょうか?

 第四部は、海を見晴るかす神奈川県大磯の、崖の上に建設中の小さな平屋。延べ床面積は約十二坪。夫婦ふたり暮らし。風が強く吹き付ける海に面した家であり、家の規模もかなり小さかったので、中村氏は電力を自力で供給できないかどうかを検討します。太陽光発電と風力発電を併用することで、それは可能になるのではないか? 結論を言えば、残念ながら自力発電は叶いませんでしたが、私たちが意識せずに暮らしているなかでの、忘れがちで大切な部分に光を当てることになりました。その顛末にもご注目いただきたいと思います。

 この特集の編集を終えた私たち編集部は、「小さな家」の魅力、素晴らしさに目覚めてしまいました。少なくとも家については「大きいことはいいことだ!」とはとても言えない、と気づいたことも大きな収穫です。小さいことの美点、美徳について、理屈ではなく肌身で感じることができたように思います。