日本の皇太子の発言をきっかけに、皇室をめぐる議論が盛んになっています。「それでは海外の王室の現状はどうなのか」と、ケーススタディーで必ず引き合いに出されるのがデンマーク王室。そしてデンマーク王室の枕詞のように必ずついてくるのは「オープン」「自由な」といった言葉です。

 フレデリック王子の経歴を眺めていると、その「自由度」に驚きます。王子はニューヨークやパリで外交官としての勤務経験があり、軍隊にも入隊しています。結婚前のデートにはコペンハーゲン市内の流行のバーが使われて、他のお客さんと同じ扱いで酒を楽しむ。市内のスポーツジムにふらりと現れてトレーニングをすることもある。取材でお会いしたデンマークの家族のなかには、オープンタイプのスポーツカーを一人で運転する王子と信号待ちで偶然隣り合わせになって、目が合ってしまった瞬間にどう挨拶したものかと狼狽した、という人もいました。

 王室の警備は日本のように厳重ではありません。フレデリック王子のロイヤルウェディングのハイライト、市内を馬車でパレードする際には、沿道にはロープもフェンスも張り巡らされず、パレードを見下ろすビルには警官の姿はありませんでした。荷物検査もありません。最悪の事態を想定していないようにも見える彼らの無防備さはいったいどこからくるのでしょう。

「オープン」で「自由」なデンマークの魅力を形容する言葉に、もうひとつ付け加えるとすればそれは「軽やかさ」かもしれません。考えてみれば、デンマークの誇る家具のデザインの魅力にも独特の軽やかさがあります。日本でもいちばん人気のあるハンス・ウェグナーのYチェアも、座面がペーパーで編まれ、重量感を与えないデザインになっています。デンマーク家具の数ある傑作名作のなかには「折り畳める」というキーワードによって、ひとつのジャンルを形成する椅子があります。折り畳めば片手でも持ち運びのできる軽やかな椅子。

 椅子ばかりではありません。やはり世界的に有名なレ・クリントの照明も、プラスチックペーパーをひとつひとつ手で折って作りあげた、浮遊感のある軽やかな照明です。シャンデリアのような重さの対極にある、実にデンマークらしさのあふれたデザイン。風力発電も電力の二〇%に迫ろうというデンマークの先進的なエネルギー事情や、自転車を偏愛し活用する国民性にも、共通するような「風の吹き抜ける印象」があります。

 王室、家具、エネルギー事情。それぞれの軽やかさがどこからやってくるのかを、「女王陛下の家具デザイン」と題して考えてみたいと思います。