子どもが百人いれば、百通りの感受性があるはずです。今回は八人の執筆者に子どもをめぐってのお話を寄せていただきました。それぞれの方の原稿のほんのさわりを引用してみましょう。

少年の避難所 鶴見俊輔
「動物として、母の暴力は愛情の行為であるとわかっていた。そのゆえに、母の非難、断罪、なぐる、蹴る、しばりつけるなどの行為に対して、私はなぐる、蹴るの暴力によって対抗することはなかった」

魔の十歳の頃 酒井順子
「で、私自身は魔の十歳の時に何にハマっていたかというと、エロ本の立ち読み。当時ぽつぽつとできはじめていたコンビニや、文房具屋さんの軒先にある雑誌ラックに置いてあるエロ本(と言っても、主に好きだったのは『漫画エロトピア』等のエロマンガ)を読むのが、実に楽しかった」

一人で興ざめ 長嶋有
「夜寝る前には必ず空想をした。その空想というのが、歯ブラシの中で一番強いのはなにかというようなことだった」

アビジョバジョって誰? 松浦弥太郎
「『最初、アビジョバジョが窓から入ってきて、そのあと、ウンコマンがトイレからでてきたの。で、最初にね、れいかちゃんとアビジョバジョがぬりえをしてたら、ウンコマンがわたしに遊ぼうって言うから、やだって言ったら、ウンコマンは泣いたの……』」

カルピスのモロモロ 岸本佐知子
「今日も幼稚園で泣いた。お弁当を食べるのがビリだったせいだ。きのうもおとといも泣いた。入園してから泣かなかった日が三個ぐらいしかない。幼稚園なんてなくなればいいのにと思う」

ライバルはあれとあれ 斎藤美奈子
「いまでも不思議に思うのは『子どものころって、なぜハゲやデベソであんなに興奮できたのだろう』ということだ。『わーい、ハゲ』と口にするだけでなんとなくウキウキし、『おまえの母ちゃんデベソ』というだけで勝ち誇った気持ちになれる」

歌が生まれるとき 竹内敏晴
「十年ばかり前からずっと気になっている現象がある。歯を噛みしめたまんまで、わずかに唇だけを開けて、ほとんど相手を見ずにぼそぼそとしゃべる子どもが、ずいぶん増えてきている」

ボタン 坂崎千春
「私はこれから冒険の旅に出ようとしている。二度と家に帰って来られないかもしれない。大袈裟ではなく、七歳の私は本当にそう思っていた」

 これらのエッセイを読み進めていくうちに、あなたの子どもだった頃の思い出が甦ってくるのではないでしょうか。