英国人の素敵な「休みかた」

「あまり知られていないけど、イギリス人は休むのがとても上手。フランス人のようにヴァカンスに命がけではないし、ドイツ人ほど旅行好きというわけでもない。けれど、毎日の暮らしから人生まで、いろんなかたちでの『小休止』を取り入れながら、自分なりの生き方のペースをつくっていくんだ」
 ──と、ロンドンに暮らして十年になるエッセイストの入江敦彦さんが言いました。われながら休み下手だけど、そんなイギリス人を見ているうちに少しずつ「OFF」の取りかたがわかるようになって、すごく楽になった、と。

 イギリスでいう「OFF」は、単純に休暇や休日という意味ではありません。仕事してない状態、ともちょっとちがう。それらと重なることもありますが、働くこと=ONはいいとしてもそれを主、OFFを従ととらえるのは、まったくの誤りだそうです。OFFとは、ONにおとらず大切な時間、人間が生きていくために不可欠であるもので、そのかたちや取りかたは人により無限のバラエティを持ちます。たとえば──

●長い週末(週末プラス一日)をゆったり過ごす「ロング・ウィークエンド・ハウス」。
●庶民が毎週通って、日向ぼっこや海水浴をするための小屋「ビーチハット」。
●作業の手を休め、15分でも必ず取る「ティー・ブレイク」。
●それを充実させるために、一年中ビンを溜め、仕事を休んで取り組む「ジャムづくり」。
●仕事本位の生き方を転換し、第2の人生を準備する「アーリー・リタイア」も。

 これらが全部、イギリス人にとってのOFFなのです。必ずしものんびりした過ごしかたとは限らず、時間や労力を費やしたり財を傾けたりすることすらありますが、それは、その人にそうする必要があったから。自由な休息、そして人生を豊かに過ごすために絶対必要な「OFF」という考え方を、ここに暮らす人々と風景とともに紹介していきましょう。

 第1回目は、「海辺のピクニック」がテーマです。ロンドンは庶民の町イーストエンドから電車一本、一時間足らずで行けるトリガイと遊園地が名物の地サウスエンド。水ぬるむ5月になると週末の遠足は最大の楽しみ。祖父母親子3代にわたり、思い思いに楽しめる場所なのです。そのためにも、人々は一年しっかり働いて海の小屋(ビーチハット)を通年契約する資金を貯めています。海辺で出会った仲良し家族に、話を聞きました。

 そして、次号では、「趣味──蒐集と園芸」を取り上げます。ホビーに熱心な人は世界中にいて何も珍しい存在ではありませんが、イギリスではごく普通に「狂」と呼びたい人々に出会ってしまいます。蒐集しかり、園芸しかり。たとえば、写真の彼は(孫娘もいる渋い中年ですが)、清涼飲料水のノベルティだったバンビ・コレクションに凝ったあまり、コレクション専用の小さな家を建ててしまったのです……。
 ほかに、自宅に立派な庭をもちながらも、園芸に没頭したくて市民農園を借りる人々など、一筋縄ではいかないイギリスの趣味=OFFを紹介します。
 ユニークで、そして楽しんだあげくにちょっと自分たちの暮らし方を考えさせられる。そんな連載が始まりました。ロンドンからちょっと足を伸ばせば目にすることのできる、季節ごとのイギリスの風景も、どうぞお楽しみに。