フライブルクといえば、ドイツ南西部に位置する、人口は20万人の中都市。街の中心に透かし彫りのような尖塔を持つ大聖堂がある美しい町で、歴史的にはオーストリアの王女だったマリー・アントワネットがフランスにお輿入れする時に通ったところとして知られています。この町の南端、市の中心からバスで十分くらいに位置するのが、最終的に二千戸が完成する予定の、エコ団地ヴォーバンです。

 ドイツの都市というと、皆さんはどのような風景を連想されますか。屋根や正面の色や形が見事に統一され、完璧といってもいい統一感のある、「中世都市」を思い浮かべられるのではないでしょうか。しかし、ヴォーバンの町並みは、よくある典型的な「ドイツの町並み」ではありません。目の覚めるような赤や黄色といった原色が塗られたタウンハウスや屋上緑化された集合住宅、木の板をそのまま張り合わせた有機的なデザインの建物からソーラーパネルを張り合わせたハイテクな住居まで、町並みはヴァラエティに富んでいます。

その雰囲気は、むしろ日本にある郊外の団地に似ていますが、それはまだ造成されてからまだ10年ぐらいしか経っていない、新しい住宅地であることに理由があるのかもしれません。もちろん日本のハーモニカを並べたような無個性な「団地」はひとつもありません。

 もうひとつ違う点があります。それは、道路には子供がチョークで落書きに熱中した跡があること。ときどき乗馬した人々が街を横切り、近くの小川では、裸になって遊ぶ子供たちの姿が見られます。ヴォーバンを「子供天国」と呼ぶ人が多いのは、家から団地の中にいる友達の家まで、車の危険と関係なく、安全に移動できることにもあるのでしょう。

 ヴォーバンの魅力は、その地図を見るとわかります。まずは、東西に伸びる中央道(ヴォーバンアレー)。この道には、樹齢七十年の大木が並んでいますが、出来てまだ十年しか経っていないこの住宅地にそんな木が並んでいるのは、基地時代からの木を切らずに造成したから。また、中央道に七つのコの字形の道が接続されていることに気づかれましたか。通称「遊びの道路」と呼ばれるこの道の中には、車で進入できますが、道路で遊んでいる人と自転車に乗っている人、歩行者を最大限に優先しなければいけないという決まりがあります。居住者の車しか利用しないように、わざとこの形にしているというわけです。

 コの字形の道路に挟まれながら、中央道に垂直に配置されているのが、五本の「緑の帯(グリューネシュパンゲ)」。幅三十メートルほどの緑地公園が、南側にある山地からの風を団地全体に通すため中央道を串刺しにしています。山から吹き下ろす気持ちの良い空気の流れを遮るものはなにもありません。この緑地には、住民の提案を生かして、五つの異なったコンセプトの公園が作られています。〈ちいさな子供向けの広場〉、〈小学生から青少年が遊ぶための公園(パンを焼くための竃もある)〉、〈家族用公園〉など、世代別に楽しめる遊び場がそれです。

 南側の、隣の村を分ける小川は、夏の天気の良い日には、子供たちが水浴びをしたり子供連れが涼みにくる絶好の場所。コンクリート三面張りの川ばかりになってしまった日本では忘れられてしまった、のどかな川の流れと涼しい風は、見る人の気分までを浮き浮きさせます。

 このような環境共生住宅ヴォーバンの実験は、大掛かりな環境共生住宅の成功例としてドイツ国内のみならず世界中でも注目され続けています。あなたも最新号の誌上でこの街の住民になってみませんか。