今回の取材旅行では、カールスルーエ在住の環境ジャーナリスト、松田雅央さんに大変お世話になりました。根っからの理系である松田さんですが、日本に「環境先進国ドイツ」の本当の姿を伝えたいという情熱をもって環境都市カールスルーエに在住し、緑溢れる都市づくり、トラムなどの交通システム、ゴミとリサイクル、自然エネルギーの活用などについて取材を重ね、その成果は、著書『環境先進国ドイツの今』やウェブ「ドイツ環境情報のページ」にまとめられています。

 ドイツ環境情報のページ
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 さて、カールスルーエでの取材最終日は、南ドイツ特有の、日差しの強い夏の日でした。お天気もいいのでと、松田さんは、町の中心部にある、一風変わったビオトープ公園を案内してくれました。

 ビオトープ――「生き物の棲むところ」を意味する、この言葉はよく耳にするが、どうもあまり日本人にはピンときません。松田さんによると、「ビオトープ」とは、「生物の受け皿」。部屋に敷かれた「カーペット」、ポケットの中の「ハンカチ」、人の「爪の垢」にも微小生物の生態系があり、これらがすべてビオトープであるという説明を聞くと、わかった気になります。それでは実際には、どんなところなのでしょうか。

 ビオトープ公園は、市の中央駅から西側、アルプ川に沿って十五分ほど歩いたところにありました。どんな公園かは、行ってから教えてくれるとのこと。松田氏は、ナゾめいた微笑みをうかべながら、我々をそこに向かう道に誘います。その道は、川幅十メートルほどのアルプ川に沿った小道。川沿いには柳や榛(はん)の木が植えてあるので、その木陰に入ると、思ったよりも涼しくなります。これはヨーロッパの夏は、日本の夏に比べて乾燥しているからでしょう。

 一見、自然のままにみえるこの小川は、十年前までは今の日本の多くの川と同じように、三面コンクリート張りで、流れもまっすぐでした。それをここ十年の間に、護岸用のコンクリートを剥がして、草木が生えるようにし、中州を作ったり、適度に蛇行するように整備して以前の状態に戻しました。川を元通りに戻してからは、虹鱒が川に戻り、それを食べる鷺も見かけるようになったといいます。

 こんもりとした丘が見えてきてました。幅百メートルぐらいで帯状の細長い丘陵地です。ドイツで公園というと、立派な木が幾何学的に生えている公園をイメージします。しかし、ここは芝生でもない、野草の生息地になっています。いわばやりっ放し、自然の生態のなるがままにし、草木の刈り取りも最低限に済ませています。ところどころに兎の糞が転がっていたり、黄色いディルの花が咲くこの土地は、犬を遊ばせたり、フリスビーを飛ばしたりしたくなるような「空き地」的空間。しかし、まっ平らではなく、土地が少し盛り上がっているのが気になります。

 この帯をだいたい六百メートルほど歩き、公園が切れるところまで行くと、その中を歩いているときには全く気づかなかったある物が見えてきました。この帯状公園の秘密については、最新号をご覧ください。