ドイツで9月18日に行われた連邦議会選挙の投票は予想外の結果に終わりました。社会民主党(SPD)の苦戦が当初から囁かれていましたが、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のメルケル候補に対する支持率が、投票直前に大幅に下がり、与野党ともに過半数が取れないという事態になりました。そのため、緑の党とキリスト教民主同盟の連立までもが想定できる異例の事態になりました。
 投票から3週間後に、キリスト教民主・社会同盟と社会民主党は次期政権で両党が大連立を組み、メルケルCDU党首の次期首相就任でやっと合意しましたが、この連立政権の成立は、これまでの環境政策にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 ドイツで環境政策が積極的に進められた理由は、なんといっても政権党に緑の党が加わり、環境大臣の椅子を占めていたことにあります。その7年間推し進められたエネルギー・環境政策は、市民の良心にうったえるだけでなく、様々な合理的ルールが施されていることに驚かされました。

 たとえば、ゴミの削減とリユース、リサイクルを進めるために、カールスルーエ市はどのようなゴミ行政をしているでしょうか。我々が訪問したエルブ家で話を聞いてみると、いろいろ面白いことがわかりました。日本では、家庭ゴミは指定されたビニール袋に入れて出せば、どれくらいの量のゴミを廃棄するのも住民の自由ですが、カールスルーエでは廃棄物の全体量を減らすために、様々な工夫を行っています。

 生ゴミ、紙などのリサイクルゴミ、それ以外のゴミ(燃やしたり埋めたりするしかないゴミ)に分別するのは当然として、その捨て方にもいろいろなルールがあります。
 まずゴミの回収車に出すためのゴミ箱は、市から貸し出されることになっていて、それ以外のゴミ箱を使うことは許されていません。なによりもドイツ的だと思えるのは、その大きさによってゴミ箱の賃貸料が異なるのです。大きければ大きいほど(ゴミを出せば出すほど)値段が高くなり、小さければ小さいほど安くなります。エルブ家では、隣の家と賃貸料が一番安いゴミ箱を共有して、半分に出費をセーブしました。
 また、リサイクルを進めるために、リサイクル用のゴミ箱の方が、それ以外のゴミ用のものよりも、ゴミを入れる量を比較して、安くなるように値段が設置されていることに、ドイツ人の論理的思考が見てとれます。

 ドイツでは、1999年から太陽光発電の発電量が年率3、4割増加し続けており、今年、日本を抜いて世界一に踊り出る予定です。確かにドイツの町を歩いていると、ソーラーパネルを取り付けている家をよく見かけますが、これは住民の自主的な意志で増えているというだけではありません。まず自分の家の屋根のソーラー発電を自分で使う家庭はまずないことが日本との大きな違い。環境保護のために法制化された電力買い取り法により、再生可能エネルギーで得た電力は、自分で使うよりもいったん電力会社に高い値段で売り、あらためて電力を買うほうが得な仕組みになっています。この法律をうまく利用すると、太陽光発電の初期投資も8、9年で回収できる。それなら、一日も早く設置した方がいいと思うのが、かしこい市民感覚ではないでしょうか。

 その他、パッシブ住宅の建築規則、都市の市民農園「クラインガルテン」の運営方法など、快適な生活とエコロジーを両立しようと努力しているドイツの環境行政には、日本にはみられない合理性と工夫があります。加えて、ドイツ人の環境保護への執念と今後の行方については、本特集の最後をしめる熊谷徹氏の『ドイツ社会に見る「環境ロマン主義」』を参照してみてください。