『住宅巡礼』や『意中の建築』など、文章の書き手としても知られる建築家・中村好文さんの新連載が始まりました。テーマは「小屋」です。小屋は住まいの原型であり、最小限の空間のなかで何を取り入れ何を省くかが問われる建築家の「腕の見せどころ」でもあります。中村さんはこれまでにも数々の小屋の名作を設計してきましたが、今回は自分のための別荘としての小屋。それは1990年の展覧会で発表した「私の休暇小屋」の計画案が出発点でした。イメージとして出品された計画案の模型には、こんな文章が添えられていました。

 これは、私自身のための休暇小屋の計画である。
 敷地は、眼下に太平洋を望む小高い南斜面で、陽当たりが良く、いつも安定した海風の吹いている草地を予定している。
 この小屋で私は、週末や少し長い休暇を、主に、海を眺めてのんびり過ごすつもりだが、加えて、エネルギーを浪費しない質素な暮らしを愉しみたいものだとも考えている。
 そのために、この小屋を、電線や電話線、水道管やガス管などの便利な「文明の命綱」で繋ぐのはやめようと思う。
 風力発電によって最小限の電力を確保すること。
 雨水を溜めこれを浄化して飲料水にすること。
 太陽熱を利用し循環空気の暖房を工夫することなど、可能な限り自然のエネルギーで小屋の生活をまかなってみたいのである。

 二十世紀最後の十年は、この小さな小屋で、風や雨や太陽の恵みと、真正面に向き合って暮らす贅沢な休暇生活を送るつもりである。

 展覧会から十五年余りが過ぎ、実現できないままだった自給自足の小屋が、俄に現実となって具体化し始めます。この新連載では、小屋がどのようにして計画され、建てられ、そして住まわれることになるかを、ほぼ同時進行で追っていくものになりそうです。ご期待ください。