東京・鳥居坂にある国際文化会館は、1955年に竣工したモダニズム建築の名作です。当時の日本を代表する建築家であった、前川國男、坂倉準三、吉村順三の三人が協同で設計をした珍しい建物であり(この三人の協同設計は後にも先にも国際文化会館だけでした)、また建てられている敷地の変遷をたどれば、江戸時代は四国の藩主の屋敷、明治初期には井上馨の所有、その後は久邇宮邸となって、昭和初期から終戦を迎えるまでは岩崎小弥太邸であったという、由緒ある土地でもあったのです。

 しかし竣工後半世紀を経て、建物の老朽化が進み、国際文化会館は取り壊しの危機に直面します。一時は保存の可能性が断たれたかに見えたものの、「保存のための保存」ではない「再生」の知恵を含んだ計画案が日本建築学会から提出され、一転して修復保存が決まりました。日本に数多く遺されているモダニズム建築が、このようなかたちで修復保存されるのは、きわめて異例なことです。

 そもそも、国際文化会館が三人の協同設計に決まったのはどのような事情があったのでしょうか? 半世紀前に国際文化会館の設立に関わった人はどのような人々だったのでしょう? そして国際文化会館とはいかなる目的で建てられたのか……それらの事情や背景をたどってゆくと、時代は第一次世界大戦にまでさかのぼることになります。アメリカの大富豪の三代目、ジョン・D・ロックフェラー三世と、日本人ジャーナリスト松本重治の若き日の出会いが、その第一歩となったのだ、ということが浮かび上がってきます。特集ではそれらの「物語」にも迫りつつ、建築を「直して使う」ことの意義をさぐります。