次号で6回目を迎える連載「季節には味がある」。タイトルのとおり、季節の恵み、春夏秋冬の移ろいを感じる食材をふたつ、「馳走 ソッ(※口ヘンに卒)啄」の店主・西塚茂光さんに選んでいただいています。
 食に限らず、桜や紅葉、祭など時季にかかわるテーマの場合はつねに避けられないことですが、雑誌が刊行される時期と食材の旬がズレては形無しです。けれども、料理を作って撮影し、書き手の平松洋子さんは、試食したうえでその味わいの体験も踏まえて料理人に取材しなくてはならない。そのため、撮影時期は雑誌刊行の1カ月半から2カ月近く前になることもしばしばで、食材を何にするかについて、毎回頭をいためます。

 

 

 春の息吹をいちばん感じるという「海苔」は、料理人も書き手も取り上げたかった貴重な素材。でも、旬の時期がわずか2週間足らず、その時期も年によって変動し、前もってわからないということで、いまだ夢の素材です。年4回の撮影にはつねにこの問題が起こるため、2005年に翌年1年分の季節のものを撮りためることにしたのです。

 そんなわけで、昨年は3カ月に2回の割で料理の撮影がありました。ここでの主役は、料理とその撮影者、日置武晴さんです。もちろん献立を立てて食材をすべて揃え、短い時間で10品を作り上げる西塚さんとお店のスタッフは氷山の水面下のような膨大な仕事をしていますし、平松さんは素材の色や香り、下ごしらえをつぶさに見るところからもう取材がはじまっています。編集者の役目といえば、この多忙きわまる人たちと、旬の食材が一堂に会するまでのセッティング(食材を間に合わせるのは西塚さんですが)にすぎません。とはいえ、それらが見事に間に合い、撮影に臨むときの嬉しさは、ちょっと言葉にできないほどです。

 撮影は、お店の営業時間を縫った土曜日の午後1時。軽く昼食を終えた料理人たちは、すでにどこからでもどうぞ、という構え。撮影者の日置さんは小さな台車にジュラルミンのトランク3つと三脚という身軽ないでたちです。てきぱきと照明や三脚のセットをしている間、平松さんとカットの確認をしたり、西塚さんに食材の産地を尋ねたり、香ばしい京番茶をいただいたり。こののんびりした時間の流れが、撮影に入ると一変します。

 料理の撮影はできあがって早ければ早いほうがいい。だから、無駄な時間を極限までなくすため、器の大きさ、明るさ、背景など写真の仕上がりを、くっきりイメージしておく。日置さんは、以前、料理の専門誌で専属カメラマンとして何年も経験を積んだそうです。ことさらあわただしい身振りや口調は見せないのに、器によってアングルを調整したり、料理の下ごしらえを撮るために調理場に入ったり、誌面が単調にならないよう背景を変えたり、いくつものことを並行して細やかに処理していきます。それでいて、ファインダーをのぞかせてもらうと、そのまま見ても美しく美味しそうな料理が、小さくまとまることなく大胆な構図で迫ってくるので驚きます。

 この連載のレイアウトは第1回目から同じです。最初の見開きで素材の写真を大きく1枚で見せ、続く見開きで料理が端正に5品並ぶ、これが2度繰り返されます。ちょっと珍しいような豪胆で大人っぽい頁になりました。
 デザイナーの島田隆さんが、最初の日置さんの素材写真を眼にして刺激され、出した形です。西塚さんの手になる見事な料理に平松さんの凛呼とした文章が寄り添い、拮抗する。頁の裏側で繰り広げられている、4者の丁々発止の闘いに、思いをはせていただけたら幸いです。