アンチョコとして『手仕事の日本』を読む。

「考える人」創刊号からの連載である「考える手」の担当編集者です。本連載は、工藝品の作り手の生き方を紹介しながら、どのようにして製品が出来上がっていくかを写真で追体験できるようになっています。

いつも頭を悩ましているのが、どのようなものを取り上げるかです。そんなときに参考にしているのが、柳宗悦の『手仕事の日本』。昭和十五年前後の伝統工藝品が地方別に取り上げられています。六十年ほど前に書かれた記述ですから、後継者がなくなってしまったものもある一方、今も地域を代表する特産品もあります。

たとえば、岩手県を代表する名産品といえば南部鉄瓶。『手仕事の日本』でも、「南部といえば誰も鉄瓶を想い起します。それほどこの仕事は盛でありました。盛岡の町には大きな店構えが並び今も仕事を続けます」(96ページ)とあります。もっとも身の回りで使われている道具を愛した宗悦らしく、「いたずらに凝って作るため形に無理が出来、美しさを殺してしまいます」と、当時の意匠には批判的で、2005年の冬号で取り上げた「釜定」の鉄瓶のような、無駄のないすっきりとしたデザインが好みだったようです。

中部地方の章では岐阜提灯が挙げられています(114ページ)。「夏の夜軒端などに吊して涼しさを添える品であります。(中略)優しい品のよい提灯であります。大きさや強さの美はありませんが、平和を愛する心の現れであります」と、宗悦の評価は高いのですが、その美しさに魅せられながら、「光の彫刻」に応用することを試みたのが日系アメリカ人芸術家のイサム・ノグチ。終戦後復員した提灯メーカー「オゼキ」現会長・尾関秀太郎氏とモダンな照明の「あかり」シリーズを作り出しました(2003年春号)。

企画のアンチョコとして読むだけでなく、再読して新たな発見をすることもあります。秋田県の阿仁には「岩七厘」といって「軟い石を材にし、それを軽く焼き、これに白と黒との漆喰を施します。隅切の四角型で、上にやや開く形」にする七輪があるという記述があります(92ページ)。最近、この箇所を読んで、以前、取材した能登半島珠洲市の珪藻土切り出し焜炉(2008年冬号)と同じ製法であることにびっくりしました。購入したので時々使っているのですが、炭が燃焼していても外側は掌で触ることができるほど断熱性が高く、我が家のバーベキューで大活躍、軟い石、つまり珪藻土を刳り貫いて炉に使うのは理にかなった作り方なのでしょう。

『手仕事の日本』を片手に、すばらしい手仕事をこれからも紹介していきたいと思っています。どうかよろしくお願いします。