カラーグラビア「『コート・ドール』斉須政雄シェフ フランス料理の発想」の文章を書いた柴田光滋さんは、実は新潮社の編集者の大先輩で、吉田健一、安部公房、丸谷才一、辻邦生など、多くの文学者を担当するかたわら、飲食関連の書籍も手掛けられました。ご自分も料理やワインに造詣が深く、『ワインをめぐる小さな冒険』などの著作もあります。その柴田さんが新潮社におられたときに、一年以上の時間をかけ、二十時間以上のインタビューを重ねて、一冊の本にされたのが、斉須政雄さんの『メニューは僕の誇りです』なのです。
本をひもといてみると、
「僕は常に今までにない料理を作りたいと思っています。といっても、奇をてらった突拍子もないものを作ろうというのではありません。……例えば、ビートルズの音楽。どこかで聞いたような旋律はどこにもない。オリジナリティーがあって、最終的にはスタンダードでしょう。そういう料理を作りたいのです」
「料理を作るのには一種の運動神経が必要です。火の通しであろうと、ソースの味つけであろうと、一瞬の見極めが勝負を決める。スポーツ選手における動体視力のようなものでしょうか」
こんな含蓄のある料理人の言葉が、ここかしこに散りばめられています。
今回は、フレンチの代表として「コート・ドール」を取材するに当たって、柴田さんにインタビューをお願いするのは、編集部としても自然の流れでした。この取材に最適の聞き手を、会社の先輩に持っていることは、われわれとしても心強いことでした。
「コート・ドール」の厨房に足を踏み入れて、まず驚かされたのが、その清潔さでした。床にはゴミどころか塵すら落ちていない様子です。訪れた時間は午後3時ごろ、これから夜に向けて、厨房のスタッフが淡々と下ごしらえや様々な準備を進めている合間をぬって、今回の取材用の料理を作って頂きました。
ここでメニューをご紹介しましょう。

冷製季節の野菜煮込み コリアンダー風味

スナップエンドウのサラダ 鴨のフォア・グラ

千葉竹岡産タチウオのムニエール 焦がしバターソース

最後に、メニュー全体に華を添える

ニュージーランド産仔羊のロースト ポテトのグラタン

どうでしょう。読むだけで、お腹が空いてきませんか。そして、鈴木敏也さんの美しい写真が「考える人」には掲載されています。ぜひ、ご覧ください。