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 時刻表と自筆年譜
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『時刻表2万キロ』など数多くの著作を持つ鉄道紀行作家の宮脇俊三さんが亡くなったのは、昨年の二月二十六日です。ご本人の強い希望で公には葬儀を行わず、お別れの会も開かれることがありませんでした。しかし約一年が経って、御遺族のご諒解を得ることができ、今週の月曜日、「宮脇俊三さんを偲ぶ会」が開かれました。宮脇さんを偲ぶ場所としてはここがいちばんふさわしいと思われる、東京ステーションホテルが会場でした。

 宮脇俊三さんは、鉄道紀行作家としてデビューされる五十一歳までは、中央公論社に勤務していた名編集者でもありました。代表的な仕事には、昭和三十三年に刊行された『幸田文全集』(作家の水村美苗さんが冬号の特集「大人のための読書案内」のなかで、愛読書にあげられていました)、北杜夫さんの大ベストセラー『どくとるマンボウ航海記』(昭和三十五年)、同年に刊行が開始された『世界の歴史』シリーズ、昭和三十七年に創刊された「中公新書」……などなど昭和三十年代の中央公論社のヒット作はほとんどが宮脇さんの企画ではないか、というイメージすらあります。

『世界の歴史』シリーズが刊行された頃、弱冠三十四歳で第二出版部長に就任し、
昭和四〇年、東京オリンピックの翌年に刊行がスタートした『日本の歴史』シリ
ーズは、第一巻が百万部を突破するという全集ものとしては空前のベストセラー
になりました。また「中央公論」「婦人公論」の編集長も歴任し、四十一歳で編
集局長、翌年には取締役に就任しています。


「考える人」編集長 松家仁之(まついえまさし)