「心と脳」の研究が極限まで行ったというけれど、はて、全体はどんな感じなんだろう? まずは諸学諸派の見取り図がほしいし、「この本を読め」的なブックガイドもあるといいね……そんなふうに編集部で話したときに、何人かの口から『心脳問題』(朝日出版社)の書名が上がりました。「心と脳」の、歴史や哲学や社会とのかかわり、諸学の唱える論やその問題点、この分野の本の紹介など、つまり私たちの雲をつかむような頼りなさの答えを一冊にまとめた本です。しかも、巻末の略歴を拝見するとまだ30代前半の著者の山本貴光・吉川浩満のお二人、脳科学が専門ではない。だからこそのわかりやすさかも知れません。お二人に、迷宮世界を楽しくたどるための〈ブックガイド〉をお願いすることにしました。

 山本さんと吉川さんはさっそく「心と脳」をめぐる探求を、読者ひとりひとりの興味や疑問からアクセスできるようなジャンル別にして、それぞれ入門編から専門書まで、フィクションから古典までと、硬軟とりそろえた構成が組み立てられました。そのうえ、ネット書店のアマゾンだけでも毎月10万円は投入しているという言葉にたがわず、セレクトした本をすべて再読してふるいにかけ、お互いのリストを検討しあって、膨大な候補から50冊に絞り込まれていきました。

 その結果、ブックガイドは五つのパート――「脳の仕組みと働きを知る」「心と脳の科学」「心脳問題に挑む哲学」「想像/創造される心脳問題」「古典を読む」――に分けられました。ただし、それぞれクロスオーバーしているので、どれか一冊を読むとその本が扱っているトピックが他の分野の研究とも密接に関連していることがわかるはず、とのこと。

 脳の仕組みを症例から描き出すラマチャンドラン他『脳のなかの幽霊』、近年の神経科学の成果、ルドゥー『シナプスが人格をつくる』、心脳問題の白眉チャーマーズ『意識する心』などの必読書はもちろん、浦沢直樹+手塚治虫『PLUTO』や映画『マトリックス』、心脳問題に挑んだ最古の書・プラトンの『パイドン』など……どれも読んでみたくなること請け合い。

 心と脳をめぐる興味深い動向をリアルに体感でき、心と脳についてもっと広く、深く知りたいと感じている方々に、またとないブックガイドです(特集の76~83頁)。また、〈「心と脳」をおさらいするための21のキーワード〉(32頁~)と、茂木健一郎さんのインタビュー脚注(38頁~)もお二人の手になるもの。ぜひ、「心と脳」探求の旅の手引きとしてお役立てください。