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 休日
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「考える人」07年春号は今晩、校了になります。ここのところ連日深夜まで残業が続いていたのですが、昨日はひさしぶりの休日でした。編集部員は全員お休みです。以前にも書いたことがあると思いますが、「考える人」は原則としてカレンダー通りに働くことにしています。どんなに忙しくても休日はきちんと休む。20代の頃は「気がついたらこの一ヶ月、土日休みなしだった」という働き方をしていました。しかし、それが原因でからだをこわしたこともありますし、ちょっと距離をおいて振り返ってみると、仕事の効率も実は悪かったんじゃないか、と思えるのです。

 それでも最終校了日の直前に休日が入るのはなんとなく不思議な感じがあります。一昨日の火曜日の夜は、「あれも、これも、まだ校了にできていない」と焦る気持ちに追い立てられながら、深夜まで働いていました。考えようによっては、やることはいっぱい残しているのですから、昨日の休日も出勤して、デスクワークをして少しでも進めておけば仕事が片付いたはず、と考えられなくもない。というか、確実にそうなのです。

「考える人」のデザイナーをしてくださっている島田隆さんも、土日には仕事をしない主義です。もちろん以前は同じように土日も休日も無しで働いていました。島田さんが土日に働かなくなった理由は、「ぼくの仕事は、自宅の仕事部屋でやっていることなので、フリーで仕事をガリガリとやっていると、完全に土日がなくなっちゃうんですよ。同僚がいないし、会社で働いているわけじゃないから土日の感覚もなくなる。だから働かないってピシッと決めちゃわないと、際限なく働くことになる。だからやめたんです」

 たしかに会社員とフリーランスの違いは休みをいかにしてとるか、というあたりにも現れそうです。島田さんはベテランですし、噂によればずいぶん新規の仕事を断っているようなのでそれには当てはまらないと思いますが、フリーで働く人の恐怖というのは、「今この仕事を断ったら、次からは依頼がなくなるんじゃないか」というものだ、と聞いたことがあります。そのようにして仕事を受注していけば、土日休みなし、ということにどうしてもなってしまう。

 私の祖母は助産婦でした。私が今住んでいる近所の方で、おばあちゃんにとりあげてもらったんですよ。と言われることもあるぐらい、完全な地域密着の昔ながらの助産婦だったのだと思います。休みはどうなっていたんだろう。もちろん出産のない日がしばらく続くこともあるでしょう(助産婦の仕事はそれだけではありませんが)。その一方で昔は陣痛促進剤などなかったでしょうから、土日も休日も年末年始もなかったはずです。

 しかしいまは病院での出産が圧倒的に多い時代になっています。病院での出産は、土日にはぐっと減ってしまう、と聞いたことがあります。いや、あえて病院の側に立つとするならば、医師も看護師も私たちと同じ人間です。休まなければからだを壊してしまう。病院にとっても休日の取り方の問題は、わたしたちが属する会社組織と同じように、考えねばならない大切な部分だと思うのです。

 しかし、生命を左右する現場では、休みなんて言っていられない、という場面がひんぱんに出てくるでしょう。しばらく前の新聞に、小児科医の医師が休みをとれない過労とプレッシャーで自殺してしまった、という痛ましいケースが報じられていました。医療の現場は私たち出版の仕事の環境とはあまりにも違います。私の想像の範囲だけで何かを言うことはできない、とは思うのですが……(ちなみに、私たちの会社においても、週刊誌勤務の社員は発売日の関係で土日休日というシステムにはなっていません。他部署の人間のように家族と休日の行動をともにすることはできない勤務態勢になっています)。

 一週間単位で休日が入る、というのは凄い知恵だなあ、と思います。人間ならではのシステムです。動物や植物にはそのような休みはありません(冬眠というのはありますが、あれはちょっとニュアンスが違う)。いやしかし、人間のように過剰に働くということがないわけですから、そのように人間も生きていれば、あえて休日をとる必要もない、というわけでしょうか……。

「考える人」編集長 松家仁之(まついえまさし)