椎名誠さんは今から61年前、世田谷区の三軒茶屋に生まれました。その後、お父さんの仕事の関係で小学校に入学する前に、千葉県の酒々井に越し(当時はものすごい田舎だったそうです)、翌年、6歳の時に、海のある千葉県幕張に移りました。今でも基本的に屋外が好きなのは、小さい頃、野山を駆け回り、海で遊んだことが影響しているのだと、何度かエッセイでも書かれています。

 お兄さんやお姉さんが本好きだった影響で、小学校低学年の頃から椎名さんの身近には、本の感触や匂いがありました。勉強は好きではなかったようですが、学校に行くと、自然に図書館に足が向いたと言います。そして、「ガツーン」と少年の心をとらえたのが、探検や冒険に関する本でした。

『さまよえる湖』(ヘディン)、『トム・ソーヤの冒険』『ハックルベリィ・フィンの冒険』(トウェイン)、『巌窟王』(デュマ)、『宝島』(スティーヴンソン)、『西遊記』(呉承恩)、『三銃士』(デュマ)、『ロビンソン・クルーソー』(デフォー)……。
 中でも、除夜の鐘級に「グゥオーン!」と感動したのが、ヴェルヌの『十五少年漂流記』でした。自分と同じような少年たちによる冒険譚に心躍らせ、何度も何度もページをめくったといいます。本に向かわない時は、まるで自分たちが冒険物語の主人公になったように、友だちと近くの海や川に冒険や探検に行きました。

 その後の椎名さんの「屋外」人生は、皆さんがご存知のとおりです。今でも世界各国、さまざまな場所に冒険に近い旅をくり返しています。
「『十五少年漂流記』は僕の原点みたいなものだから、いつかしっかりと書いてみたかったんだ」ということで始まった連載が、この『黄金の十五人と謎の島』です。『十五少年漂流記』を円の中心において、今まで経験してきた旅や冒険で感じた、「人間にとって冒険とは何か、自然とは何か」の答えを、この連載で考えてみたいそうです。

 余談ですが、二〇〇五年はヴェルヌの没後百年にあたります。ヴェルヌが『十五少年の漂流記』を書いたのが六十歳、椎名さんも昨年六十歳を迎えました。
 十一月下旬、椎名さんは2006年の冬号の原稿を書き終えるや、今年5回目の海外取材であるロシアに向けて、あたふたと出発しました。