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 最終校了日
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 だいぶ冷え込んできた今日はもう17日。あと二週間で大晦日だなんて信じられない気持ちです。28日発売の次号「考える人」もいよいよ今晩で校了です。トンネルのなかにいると、なかなか前方が見えないものですが、抜けてしまえば、まわりはあっけなく明るい。しかし気をつけないと、トンネルを抜ける間際におおきな見落としや忘れ物がでてきたりするものです。最終校了日はいっそう気をつけて、ダブルチェックをしないとおそろしい。

 私は27年の編集者生活のなかで、およそ3分の1は書籍編集者として働き、残りの3分の2は雑誌編集者として働いてきました。書籍編集者と雑誌編集者のちがいは何か、と問われれば、いろいろな角度からいくつもの答えがでてくるでしょう。しかしなんといっても、「ひとり」か「複数」かのちがいが大きい。雑誌はグループワーク、書籍編集者はひとり。これを気楽と思う場合もあれば、孤独だと思うこともあるわけです。

 もちろんひとりで本はつくれません。校閲、進行、営業、製作、装幀の担当者の力をかりなければ本はかたちにはならない。しかし、原稿を入稿し、ゲラになったものを著者と校閲者に校正してもらい、印刷所に戻し、というデスクワークは、基本的にひとりで行うのが書籍編集者のスタイルです。

 しかも書籍編集者は、同時に何冊かの本を動かしています。執筆する前に著者と相談している段階のもの、原稿が完成して受け取って精読しているもの、初校ゲラになっているもの、著者から校正済みのゲラが返ってきたもの、校了間際のもの……入稿から校了までのさまざまな段階の「原稿」が、場合によって二冊、三冊、四冊と並行して進んでいる場合も少なくありません。ゲラを校了にしなければいけない間際に、他の著者との打ち合わせが入ることもあれば、原稿が完成した、という朗報をきけば、デスクワークは中断して原稿をいただきにあがることにもなります(最近はメールで届くほうが多いかもしれませんが)。

 しかし雑誌編集は、入稿から校了まで決まったサイクルで進行しているので、スケジュール管理は否応なく固定したものになってくる。校了期間は複数の編集者が同じゲラをチェックしていますので、仮にひとりが見落としても、もうひとりがそのことに気づく、というセーフティ・ネットもある。しかも校了期間は、ややテンション高めに同じワークテーブルを囲んでいることにもなりますから、忙しいさなかに雑談で盛り上がったり、笑いあったりもできる。雑誌編集の仕事は、適度に息抜きも入り、思いがけないフォローを受けられますから、少なくとも孤独に作業をしているつもりでも、そこにはグループワーク的なコミュニケーションが浮かび上がってくる。

 自分はあえて選べばどっち向きなんだろう、と自問自答してみました。それでもパッとは結論がでません。それぞれに自分に向いているところがある。とかなんとか書いているうちに、校閲部から最新号のゲラがおりてきました。こうしてはいられない、「責了」のはんこを右手にもちながらの校了作業に戻ることにします。しかし眠いな。放っておくと顔ごとゲラに激突してしまいそうです。ふだんは飲まないエスプレッソを多めに飲んで、あたまをはっきりとさせなければ。

「考える人」編集長 松家仁之(まついえまさし)
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