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 女性が働くこと
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 今年の大学4年生の様子を見ていると、3年生の終わりの頃からきびしく長い就職活動に入って、いまだに長いトンネルのなかにあるようです。新潮社も会社説明会があり、採用のための面接があり、そのことにも多少かかわる場合がありますから、彼らの表情を見ていると、その長いトンネルをくぐり抜けてくるうちに、ほんとうに疲弊しているんだろうな、ということが伝わってきて、なんとも言えない気持ちになります。

 昨日、4年生の男子大学生と話していたら、「就職活動をしていると、女の子はとくにたいへんだなあとおもいます」と言います。彼が足を運んだ複数の会社の、会社説明会から面接への流れを見ていると、最初の会社説明会では6対4ぐらいの割合で女性が多かったのに、一次面接に行くとそれが5対5になり、二次面接で4対6になり、最終面接では3対7ぐらいの割合になっている会社が少なくない、と言うのです。

 会社の名前をきくと、歴史も名もある大企業だったりするので、びっくりします。女性は結婚して退社したり、結婚して退社せずとも今度は産休育休をとることがあるから、労働力として不安定だ、という認識がまだ抜けないのでしょうか。「女性の上司」というような言い方も、まだ何か特別なものとしてのニュアンスを残している感じがあります。

 上司が女性か男性かなどというのは、ほとんど意味がないはず。「いい上司」か「悪い上司」しかいないのですから。しかし、大学4年生ぐらいだと、男女の間には明らかに差がある。つまり大人として成長している割合が高いのは女性のほうではないか、ということです。男の子は未完成で、どこか危なっかしい。その「差」はずっと変わらないのかもしれない。我が身を含めてそう思わないでもないのですが、それはまた別の話。

 男の子の場合はしかし、未完成で危なっかしい感じだった人が、5年、6年後にぐんと成長するケースがあります。女の子は、完成した感じで入ってくるので、そのまま淡々と一見同じ様子で働いていたりする。ところが、ぐんと成長しても、ばたんと倒れたり、どこかへ消えてしまうのも、男の子のたどるひとつのありがちな道なのかもしれません。

「考える人」2009年秋号の特集「活字から、ウェブへの……。」で、インタビューをさせていただいた糸井重里さんの事務所におうかがいしたとき思ったのは、「ほぼ日」のスタッフの方々には女性が多いみたいだ、ということでした。糸井さんはもちろんそのことに意識的でいらして、女性が多くなるのは当然のこと、という気配さえうかがえました。

 言葉を扱う能力も、相手と上手にコミュニケーションする能力も、相手をなごませる能力も、はっきりと言うべきことを言う能力も、どれも女性のほうが秀でているのではないか、と感じることがあります。「ほぼ日」のようなコミュニケーション企業がいまのような隆盛を誇っているのも、女性の能力をきちんと伸ばすことのできる職場だからではないのか。

「ほぼ日」の男性スタッフはと言えば、やさしい感じの、笑顔が柔らかい人が多い気がするのです。間違っても大きな声を出したりはしなさそうな感じ。ものごとを批評したり、「お説」を開陳する時間があったら、先に手を動かそうよ、そういうタイプの男性に見える。エプロンがよく似合う感じの男性、とでもいいましょうか。

 保育園の待機児童の話など「お役所」の仕事だと、知らぬふりをしている企業がまだまだ多いのではと思います。しかし、これから伸びていくのは、保育園の併設を考え、そして実行できるような会社ではないでしょうか。女性を大いに採用し、のびのび働くことのできる会社。そんな会社が増えれば、男性にとっても生きやすい社会になるのではないか。そんなことを考えます。

「考える人」編集長 松家仁之(まついえまさし)
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