木内達朗さんのイラストレーターとしての仕事は、たくさんの方が目にしていると思います。このホームページの「考える本棚」でご紹介したことがあるもので言えば、梨木香歩さんとの共著『蟹塚縁起』(理論社)がそうです。あまり知られていないかもしれませんが、木内さんは海外での仕事もあり、最近ではアメリカの老舗雑誌「ニューヨーカー」でもイラストレーションを担当しています。

 経歴もイラストレーターとしてはやや異色です。国際基督教大学(ICU)の理学科で生物を専攻し、たしか卒論のテーマは「ゴキブリ」だったとうかがったことがあります。海洋実習にも出かけ、ウニやヒトデなどの無脊椎動物の観察もしていたとか。ICUを卒業後に本格的に絵を学ぶために渡米し、アート・センター・カレッジ・オブ・デザインを卒業、91年に帰国してからイラストレーターとして活躍するようになりました。

 連載「チキュウズィン」は、木内さんがどこかの雑誌や新聞に依頼された仕事ではなく、自分で考えついて描き始めたマンガです。たまたま木内さんの個展で発表されていたものを見て、「考える人」での掲載をお願いすることになりました。

「チキュウズィン」は名前のとおりどうやら地球が人物化したキャラクターなのですが、どことなくアナーキーな雰囲気もあり、森羅万象のなかで蠢く生物、自然現象を呼び寄せる得体の知れないパワーがあります。展開を予想できない脈略のなさもある。そしてどこか可笑しい。笑いの質で言えば、たとえば映画なら、チャップリンではなくバスター・キートン系、ということになるでしょうか。

「ゴキブリ」を研究する人ならではの仕事かもしれない──という無茶な感想も湧いてくるちょっと不思議でパワフルな連載をお楽しみください。