【考える本棚】
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 石橋毅史『「本屋」は死なない』(新潮社)
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宇宙の微塵となりて------------------------------------------------------------------------

 著者は現在、41歳。このロードムービーのように展開するノンフィクション作品を「教養小説(ビルドゥングスロマン)仕立て」というには、やや年を取り過ぎているかもしれません。ただ、主人公(著者)はまさにそういう謙虚な気構えで、あえてナイーブな、愚直な聞き手役に徹しながら、「本」と「本屋」のこれからのあり方を問い、自らも新たな一歩を進めようとしています。

 出版業界紙「新文化」の編集長を務め、2009年いっぱいで退職した著者が、初
めて書き下ろしたのが本書です。タイトルが『「本屋」は死なない』となれば、
おそらく誰しもが、これまでの蓄積を活かした“卒業論文”的な業界本を想像す
ると思います。ところが、実際は大いに違っています。長年親しんだ書店の世界
をテーマにしながら、むしろ業界本にしなかったところがこの本の面白さです。
状況論のような大上段に構えた議論を意識的に避け、著者の素朴で個人的な、だ
からこそ真剣な問いかけが繰り返されます。

 もうひとりは、ここには直接登場していませんが、著者が編集長時代に連載を
企画し、それを直接担当し、さらには単行本化をプロデュースした『傷だらけの
店長』(伊達雅彦、パルコ出版)の匿名の店長です。いまの書店での「葛藤、苦
悩、鬱屈、ささやかな喜びにまみれた日々と、やがて書店の現場を去ってゆくま
でを綴った」その本については、このメールマガジンのNo.252でも紹介したこと
があります。おそらく現在の書店のあり方に対して誰よりも悩み、「傷だらけ」
になり、いったん退却の道を選ぶしかなかったその彼に対して、自分はどういう
答えを用意することができるのか、という思いが著者には常にあったに違いあり
ません。

「考える人」編集長 河野通和(こうのみちかず)
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