今回の「続・クラシック音楽と本さえあれば」では、「音楽を読む愉しみ」についてもぜひご紹介したいと思いました。クラシックについて詳しい人はもちろん、これまであまり縁のなかった人たちも、本という入口を通してであれば、より身近にクラシックを楽しんでいただけるのではと思ったからです。

 ご案内をお願いしたのは以下のかたがたです。
 まず音楽プロデューサーの中野雄さん。宇野功芳さん、福島章恭さんとの鼎談形式のガイドブック『クラシックCDの名盤』をご存知の方も多いかと思います。それから『西洋音楽史』『オペラの運命』などの著者である、西洋音楽史家の岡田暁生さん。『クラシック名盤ほめ殺し』『クラシック批評こてんぱん』など、痛快でちょっと過激な批評が人気の鈴木淳史さん、『ピアソラ』『音楽 あたらしい教科書』などの著者で音楽文化論が専門の小沼純一さん。そして、マニアをうならせる専門誌、「クラシックジャーナル」編集長である中川右介さん。

 この5人のみなさんに、音楽をめぐる本を6ジャンルに分け、これだけは読んでおきたい名著・快著を紹介していただきました。ちょっとずつごらんいただきましょう。

【自伝・評伝の名作は?】は中野雄さん。「自伝も評伝も、20世紀の初頭までは作曲家(正確に言えば作曲家兼演奏家)のものが面白く、20世紀以降は『演奏家もの』が断然面白い」という視点から、バッハ、ベートーヴェン、マーラー、バレンボイム、ショルティ、アーノンクールなどをめぐる本、12冊をあげてくださいました。

【音楽史を知って深く聴く】は岡田暁生さん。「『音楽を通した過去との対話』(中略)『歴史的な聴き方』へと魅力的な言葉でもって私たちを誘ってくれるような本」として、吉田秀和『モーツァルトを求めて』、アーノンクール『古楽とは何か』、アドルノ『楽興の時』など、読み応えのある名著を紹介してくださいました。

【音楽家の書いた本】は鈴木淳史さん。「その本を読めば、書き手の音楽が自ずと聴こえてくるようなもの」ということで、ヴァイオリニストのクレーメル、ピアニストのグリモー、アファナシエフ、作曲家のオネゲル、武満徹らによる、10冊の本を紹介してくださいました。岡田暁生さんにつづき、アーノンクール『古楽とは何か』をあげていらっしゃるのも印象的です。

【音楽批評はこれを読みたい】は小沼純一さん。「聴いているだけでいい。批評などいらない」という声をはっきりと意識したうえで、それでもなお批評は必要なのだという観点から、小林秀雄、林光、シューマン、サイード、バルト、さらに作家パスカル・キニャールなど、独自の視点からいま読むべき音楽「批評」をあげてくださいました。

【書簡・日記で知る音楽家】も中野雄さん。「音楽史上『書簡』と言えば、何を措いてもまず『モーツァルトの手紙』」。さらにベートーヴェン、シューベルト、ドビュッシー、バルトークの手紙、シュトラウスとホーフマンスタールの往復書簡、フルトヴェングラー、ワルターの手紙など、音楽家の生の姿が伝わってくる魅力的な書簡集・日記が紹介されています。

【本当に役に立つ「レコードガイド」】とは? という難題に答えてくださったのは、中川右介さん。「本としてのレコードガイドに求められるものは、(1)選定基準の正当性、(2)情報としての精度と網羅度、(3)評論としての文章力。この三つのバランスがよければよいほど、実は、つまらない本になる」という卓見を前提に、あらえびす(野村胡堂)から鈴木淳史さん、各社CDガイドまで、入門者からマニアまでが楽しめる(役に立つ)11冊をあげてくださいました。

 読む愉しみと聴く愉しみをどちらも味わえる音楽書ガイドを、どうぞごらんください。