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 野坂番のさだめ
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 12月9日、野坂昭如さんが亡くなりました。お世話になった作家の訃報に接す
ることがとみに増えている昨今ですが、私にとって野坂さんは格別の存在です。
前回このメールマガジンで、新米編集者の私が女優の連載対談を命じられた話を
書きました。それとほぼ同じ頃、担当を仰せつかったのが“野坂番”でした。

「今度、ノサカショーニョの連載を始めることになったので、担当してもらう」
――ある朝、「婦人公論」編集長に言われます。ノサカは、“あの野坂”以外に
思い浮かばず、ショーニョはなるほど「昭如」のことかと見当がつき、「光栄で
す」と短く答えます。すると、「ハハハ、大変だぞ」と編集長の顔に意味ありげ
な笑みが浮かびます。「ま、君はまだ何も知らないだろうから、細かいことはM
君に聞くように」。……そこでM先輩に声をかけると、「ハハハ、身体は丈夫そ
うだから、きっと務まるよ」と、明るく笑って肩を叩きます。

 周囲の人たちからは、微に入り細に入り、編集長の顔に浮かんだ笑みの意味を
講釈されます。先輩編集者だった作家の村松友視さん(当時は文芸誌「海」編集
部)からは、ほぼ実況中継のように聞きました。

「考える人」編集長 河野通和(こうのみちかず)