GRAPHIC SPECIAL
グラフィック・スペシャル

「考える人」には、今森光彦さん、岩合光昭さんなど日本を代表する自然写真家が登場します。彼らの最新の仕事を紹介するページが GRAPHIC SPECIAL。「考えてばかり」で使いすぎた頭をどうぞリフレッシュしてください。

星野道夫「カリブーの旅」

「まだ撮り切れていないんです。もう少し時間をください」
 星野道夫さんにとって、カリブーは単なる被写体ではありませんでした。アラスカを中心に撮影を続け、さまざまな野生動物の写真集を発表していた星野さんでしたが、ライフワークと位置づけていたカリブーについては、その完成度をぎりぎりまで高めようと、編集者を何年も待たせていました。人間と自然の関わり、野生動物の壮大なライフサイクル……星野さんは、その著作のなかで、私たち人間が太古の昔に感じていたであろう、生命への畏敬の念を、独自な視点で捉え、さまざまな個人的体験をまじえながら、透明感溢れる文章で表現しました。しかし、1996年8月8日。星野さんは、取材先のロシア・カムチャツカでクマに襲われ急逝されました。星野さんが思い描いていた写真集は幻となったのです……。

「考える人」は、星野直子夫人の全面的な協力を得て、アラスカ・フェアバンクスの自宅に残された未整理のフィルムも含め、これまで星野さんが撮影したカリブーの写真をすべてチェックし直して、幻の写真集を再構成するプロジェクトの一翼を担うことになりました。また、1985年、33歳の星野さんがトヨタ財団からの助成を受け、その報告書として提出したレポート「北極油田開発により変貌しようとするカリブーの季節移動と、その狩猟生活にかかわるアラスカ原住民の記録」を初めて誌上で公開します。