岩合さんの新たな挑戦

 2005年春号から、岩合光昭さんの新連載「花と動物」が始まりました。これまでずっと、たくさんの動物を撮り続けている岩合さんですが、花のベストシーズンに動物に出会えるチャンスには、なかなか恵まれなかったそうです。以前「考える人」に登場したホッキョクグマと赤いヒメヤナギランの写真などは、文字通り、めったに見られないものだったのです。

 なにしろ被写体は野生動物。岩合さんの希望どおりに現われてくれないのは当然です。加えて、花が咲く時期は毎年微妙に変わります。入念にリサーチしても、開花時期にぴったり合わせるのは至難の業でしょう。今回は、敢えて、その難しいテーマに挑まれているというわけです。

 動物が花のなかにたたずむ風景は、私たちの心をほんとうに和ませてくれますが、人間による地球環境への影響は深刻です。野生動物が棲みにくくなっているのはもちろんですが、カナダの国立公園で、30数年前に初めて訪れたときには一本も樹木がなかった場所に、トウヒの林が出現しているのを見つけたり、道沿いに、本来はヨーロッパに生えているはずの植物を見かけたり、撮影中に気づくことがいろいろあるそうです。

 地球温暖化など、人間の手による地球の環境汚染が問題視されています。それは動物や植物たちを絶滅の危機に陥れるのはもちろん、ひいてはわたしたち自らの生存を危険に晒すことになります。ここで、岩合さんとともに「考える人」に連載されている松井孝典さんの提言を引用したいと思います。

「考え方として、少なくとも悪くならない方向に持っていくには、これから我々がとりあえず何をすればよいのかを考えてみましょう。
 そのためには新しい思想が必要だろうと思います。それを私は“レンタルの思想”と呼んでいます。(略)
 我々の存在そのものも実はレンタルです。我々は自分のからだを自分の所有物だと思っています。しかし、これは物としては地球から借りているにすぎません。死ねば地球に返るだけのことです」(岩波新書『宇宙人としての生き方』より)

 私たち自身が間近に見ることはできなくても、野生動物が地球のどこかで命を育み、美しい花が咲き続けられるために、そして私たち自身のためにも、何をすべきなのか、岩合さんの写真を見ながら、時には考えてみることも必要なのかもしれません。