昨年末からイタリアのローマ市立現代美術館(Museo d'Arte Contemporanea Roma)で開催されていた野町和嘉氏の写真展「Le vie del Sacro」(聖地巡礼)が、約30000人の観客を動員して、5月に幕を閉じました。「考える人」2014年春号で、その出品作を紹介しています。

ローマ展の会場は、広さ1000m?、スペースデザイナーの設計により、テーマ別(サハラ、ナイル、エチオピア、イスラーム、ガンジス)に5本の回廊を設営し、さらに次の部屋でチベットとアンデスを展開。既存の展示壁面を持たない室内に鉄骨構造を組み立て、2300本の木製の桟(横木)を吊すという、日本で開催される写真展では考えられないような、大規模で斬新なインスタレーションでした。

写真展は地元でも大反響を呼んで、メディアでも大きく取り上げられました。

「彼の芸術の強度は、祈りという行為にどれだけ力があるか、人間のつながりにどれだけの強さがあるか、人間と環境が調和しえるかを完璧にあきらかにしている。」(ROMEING誌)

「展示は二つの構造によって性格づけられている。一方は、サハラ砂漠やインドのガンジス河、メッカ、チベットなどを含む世界中をめぐる写真の旅を、もう一方は、土地に固有の人々に学び、われわれのものとはまったく異なる、自然と完全に調和した人生を示している。」(Il Giornale di Letterefilosofia.it誌)

「主催者が予想したよりは、来場者は少なかったようですが、その反応には非常に濃密なものがありました。世界中の様々な宗教を広範囲に、40年間もかけて追い続けている写真家なんて、そんなにはいないから、驚き、また共感、感動してくれたのでしょう。ご覧頂いた方々から、たくさんのメッセージを頂きました。日本で写真展を開催したときよりも、ダイレクトに率直な反応があって、強い手応えを感じています」(野町氏)

野町氏は、世界の宗教の聖地や辺境を巡り、そこに生きる人々と、彼らの祈りの姿を撮り続けて世界的に高い評価を得ている写真家です。この展覧会のベースとなった写真集「PILGRIMAGE」(邦題『地球巡礼』新潮社)は、2005年、世界10ヵ国で同時出版され、累計約十万部を刊行。その後も野町氏は撮影を続け、『サハラ 砂漠の画廊』(2010年、新潮社)、『ガンジス』(2011年、新潮社)をはじめ、その成果は写真集として結実しており、今回の展覧会でも多数の新作を発表しています。

ローマ展の主催者は、展覧会の盛況を受けて、ヴェネツィアやミラノなど北部の都市にこの写真展を巡回させるべく、準備を始めていると聞きました。日本国内での“凱旋写真展”もぜひ見たいものです。