今回のカリフォルニア特集で反省している点があります。通常、雑誌でレストランを取り上げるとしたら、そこで食卓に出される料理の写真や詳しい説明が載っていてもよいはず。しかし、記事では、調理や素材に対する考え方については紹介しましたが、実際に出てくる料理についてはあまり触れませんでした。それなので、レポートに「色気」ならぬ「味気」がなかったのではないかと心配しています。そこでここではバークレーにあるカリフォルニア料理の老舗レストラン、シェ・パニースで出された料理をご紹介します。

6月18日、私たちが「シェ・パニース・カフェ」を訪れた時の、お昼のメニューを御覧下さい。カフェは定食式になっていて、
1 Garden lettuce salad
2 Farro spaghetti with heirloom tomatoes,shellbeans,hot pepper,and ricotta salata
3 A plate of cookies
がコースで27ドル。私たち取材陣は、加えて前菜に
4 Avocado and beet salad with preserved lemon and Marash pepper
主菜に
5 Grilled Laughing Stock Farm pork leg and sausage with sweet corn polenta,green beans,and black olives,
を追加オーダーしました。

 料理を舌で味わうだけでなく、それについて知ることで食事の楽しみは広がります。グルメの本質は「舌で食べる」よりも「頭脳で食べる」ことにあるのではないでしょうか。メニューをインターネットや辞書で調べてみると、意外な発見がありました。

 1のガーデン・レタス・サラダは、シェ・パニースの基本ともいえる前菜で、新鮮なレタスをビネグレットで合えたもの。ビネグレットとは酢とオリーブ油を混ぜたドレッシングで、酢と油のバランスにより風味と味わいが微妙に変化します(このレタス・サラダは、アリス・ウォータース著・坂原幹子訳『シェ・パニースのキッチン』文渓堂刊に詳しいレシピが記載してあります)。

 2のパスタは、写真で見てわかるように、麺が茶色をしていて食感も日本の蕎麦のようだったので、ファッロとは蕎麦粉かと思っていました。しかし、後で調べてみると、精製せずそのまま石臼で挽いた有機栽培小麦のこと、「玄米」ならぬ「玄麦」で作ったパスタで、これは古代ローマ時代からの製法だそうです。エアロームとは「家族伝来の」という意味で、安易な品種改良をされていない固定種のトマト、リコッタ・サラータは塩を加え熟成させたチーズですから、訳すとすれば、
2 エアローム・トマトとインゲン豆のファッロ・スパゲッティ、リコッタ・サラータ和えとなるでしょうか。

 アラカルトでたのんだプレートも訳してみると、
4 アボガドとビーツのサラダ、塩漬けレモンとマラッシュ胡椒和え
5 ラフィング・ストック農場の豚の足肉とソーセージ、スイート・コーン・ポレンタとサヤインゲン、黒オリーブ添え

 メニューには記載されていませんが、4には柿が和えられているので、塩味と果物の甘味が調和していて独特の味わい。サラダに果実を使うのはカリフォルニア・キュイジーヌならではの調理法だと思いました。