亀山郁夫氏による新訳版ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(光文社古典新訳文庫)が50万部以上も売れているという現象は、翻訳書の世界で、いや、出版界全体にとっても、近年もっとも喜ばしいニュースのひとつだと思います。あれほど重厚長大で、日本人には耳慣れない登場人物名および愛称がどんどん出てくる作品を、誰にも読みやすくした功績ははかり知れない(……蛇足ながら、新潮文庫版『カラマーゾフの兄弟』も「亀山効果」が波及して、増刷のペースに弾みがついたようです。まもなく130万部を突破するでしょう)。

 新潮社の翻訳書シリーズ「新潮クレスト・ブックス」も、今年で創刊10周年を迎えます。また、全巻完結した『ガルシア=マルケス全小説』は続々と版を重ねていますし、長篇小説の醍醐味を久しぶりに堪能させてくれたジョン・アーヴィングの新作『また会う日まで』や、村上春樹氏の新訳によるトルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』も刊行されたばかり。来春から『V.』、『重力の虹』の作家トマス・ピンチョンの全小説の刊行も始まるとなれば、こうした海外文学をめぐるさまざまな動きは、ひとつの大きなうねりにも思えて、最新号の特集を「海外の長篇小説ベスト100」とすることにしました。

 詳しい内容の紹介は、追ってお伝えすることにして、まずは目次をご紹介させていただきます。

 ロングインタビュー 丸谷才一 
 長篇小説はどこからきてどこへゆくのか

 ロングインタビュー 池澤夏樹
 長篇小説とは、「完結する」ものである

 特別寄稿 デイヴィッド・ロッジ
 わたしの好きな10の長篇

 海外の長篇小説ベスト100
(作家、批評家、翻訳家、新聞記者、エッセイスト、脳科学者、哲学者、建築家、精神科医……129人による投票で選んだベスト100を発表します。101位以下のランキング付き)

 大アンケート 私の「海外の長篇小説ベスト10」
上記ベスト100を決定したアンケート結果を、129人のコメント付きでご紹介します)

 検証座談会 青山南、加藤典洋、豊崎由美 
 意外だ。惜しい。あ、忘れてた!

 対談 鶴見俊輔×高野文子
 「チボー家の人々」と「黄色い本」

 エッセイ 私の一冊
 河野多惠子 川上弘美 いしいしんじ 小野寺健 高山文彦

 各国のベスト100、ベスト50