デイヴィッド・ロッジは『交換教授』『楽園ニュース』『考える…』など英国コミック・ノヴェルの第一人者であり、古今の傑作五十作を五十の角度から分析した『小説の技巧』を著すなど際立った理論派作家でもあります。『小説の技巧』は、ジェイムズ・ジョイス、T・S・エリオット、ジェイン・オースティンらの古典から、サリンジャー、アップダイク、クンデラなどの20世紀を代表する作家たち、さらにカズオ・イシグロらの作品がとりあげられた、まさに小説好き必読の本でした。

 では、作家として、批評家として、研究者として、おびただしい文学作品を読み込んできたデイヴィッド・ロッジが、ほんとうに好きな10作とはなんだろう。聞いてみたいな。今号の特集にぜひ寄稿してもらえないだろうか、とお願いしてみたところ、快く引き受けてくださり、〆切よりもずっと早く、いちばん乗りで原稿が届きました。

 好きな小説10作を挙げることは、「名作ベスト10」を挙げることとは違う。――とロッジは書き始めます。「わたしの好きな10の長篇」ということで選ばれた10作は、難解なことで鳴る英国文学の金字塔的作品から、ああ、この人のこれをあげてきたか、と深いところで納得できるようなアメリカのSF小説まで、いずれもロッジにとっては長年にわたる「愛読書」(10作のタイトルはぜひ本誌で)。

 なぜ自分はその小説が好きなのか、なぜ大切なのか、ということが、個人的な体験をふんだんに交えながら語られるうち、小説というものの真髄にぐんぐん迫っていくようなロッジのこのエッセイを、どうぞお楽しみください。