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2002年12月5日

『萩元晴彦著作集』(郷土出版社)

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『萩元晴彦著作集』(郷土出版社)

 冬号の特集でとりあげた伊丹さんのテレビの仕事は、その多くがテレビマンユニオンとの共同作業によって創り出されたものでした。テレビマンユニオンは1970年にTBSの社員を中心に設立されたテレビ番組制作会社です。社長は社員の投票で決める、といった常識やぶりな経営でも知られ、伊丹さんがのびのびと自由に議論をしながら番組作りに関われたのも、テレビマンユニオンのそのような社の精神とは無縁ではなかったはずです。

 創立してしばらくは「遠くへ行きたい」などの放映時間の短い番組を中心に制作をしていたテレビマンユニオンが、社運を賭け創立5周年で企画したのが伊丹十三氏を案内役とした長時間の画期的なドキュメンタリードラマ「欧州から愛をこめて」でした。テレビマンユニオン制作の人気番組「世界ふしぎ発見!」や「世界ウルルン滞在記」などの番組作りの原型が伊丹さんが関わったそれらの番組に見て取ることができます。

 この本の著者、萩元晴彦氏はその初代社長です。萩元さんはサントリーホールのオープニングシリーズや先日幕を閉じたカザルスホール総合プロデューサーとしても活躍されました。旧制松本中学時代にはピッチャーとして甲子園にも出場した経歴も持ち、その独特の柔らかく厳しく楽しい人柄が多くの人々を惹きつけました。

 萩元さんは優れた文章の書き手でもありました。萩元さんが何かについて書くとき、それは本についてでも、あるいは演奏家についてでも、読み手はいつしか萩元さんの考えのなかに取り込まれ、その意見に説得されてしまう、不思議な「話術」がありました。

 私が「小説新潮」編集部にいた頃、萩元さんに1頁の書評の連載をお願いし、それは私が異動した後も萩元さんが病に倒れるまで続きました。原稿はいつもぎりぎりでした。原稿を頂戴するまでに何度もファックスでのやりとりがあり(達筆な毛筆です)、「こんな面白い手紙をファックスで書く暇があったら早く原稿を書いてくださいよ」といいたくなる場面も多々ありましたが、進行係の渋い顔を横目で見ながら、内心そのやりとりを毎回ひそかに楽しみにしていたのも事実です。

 残念ながら萩元さんは昨年の9月に亡くなられましたが、数多く残された魅力的な文章がこの本にまとめられました。ものづくりに関わる人間の熱い情熱や夢、それを実行に移すための冷徹な思考力が垣間見える刺戟的な本だと思います。
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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長 松村 正樹


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