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2007年10月18日

レコード・コレクターズ増刊「ロック・アルバム・ベスト100」(ミュージック・マガジン)

Kangaeruhito HTML Mail Magazine 256
 

レコード・コレクターズ増刊「ロック・アルバム・ベスト100」(ミュージック・マガジン)

 中学1年か2年の頃から毎月「ニューミュージック・マガジン」を買い求め、ひと月の小遣いをやりくりし厳選に厳選を重ねて1枚だけLPを購入する、という音楽生活が始まりました。途中で「ニューミュージック・マガジン」の誌名から「ニュー」がとれて「ミュージック・マガジン」に変更になり、私は高校生、大学生、社会人になり、やがていつの頃からか毎号は買わなくなって、今では1年に1冊か2冊ぐらいしか手が伸びなくなってしまいました。

 誤解がないように申し添えると、「ミュージック・マガジン」が雑誌として面白くなくなったから買わなくなったというのではないのです。毎号買って最新の音楽情報やインタビューを読み、新譜を買い求めるというほどには現在のロックが私には面白いと思えなくなってきた、というのが実情です。いや、「単にロックに追いつけずオヤジ化しただけだよ」と言われてしまえばそれまでなのですが。

 そのかわりに、毎号とは言わないまでも特集によって買うようになったのは、25年前に「ミュージック・マガジン」の姉妹誌としてスタートした「レコード・コレクターズ」でした。新譜情報もしっかりと入っているとはいえ、方向性としては過去に発表済みであるミュージシャンの作品を通時的にふり返りながら評価し直す、という編集方針の雑誌です。全体としてはレトロスペクティヴ。そして少しトリビアルな探求心、コアなロックファンの「コレクター」心を刺激する部分もある。

 25年前創刊ということは、1980年代前半。私はまだこの頃は同時進行的にロックを追いかけて聴き続けていたと思います。80年代半ばぐらいからピーター・バラカン氏が司会をしていたテレビの深夜番組「ポッパーズMTV」は必ずビデオに撮って、ビデオクリップを繰り返し見る楽しみも加わりました。やがて新譜を熱心にチェックしなくなっていったのは90年代に入ってからだったでしょうか。出れば必ず買うミュージシャンを4、5人だけ残して、あとは新しいものを追いかける気持ちがすーっと失せてしまったのです。

 さて、本屋で見かけて躊躇なく購入したこの増刊号の「メインイベント」は、「レコード・コレクターズ」の執筆陣が60年代から80年代までのロックの名盤を各人で25点ずつ選出し、その合計点でベスト100を選び出す、というものです。それ以外にも読者へのアンケートで選んだベスト100、60年代、70年代、80年代と年代別にベスト100を選ぶ、さらにそれぞれの項目の101位以下のリスト、選者別のベスト25、柴田元幸さんや坪内祐三さんらゲスト選者によるベスト20も掲載されているので、それぞれの項目で名盤の順位は上がったり下がったり、消えたり抜擢されたり、その異動ぶりがまた面白い。

 私が同時代的にロックを聴くことができるようになったのは、1969年以降のことでした(最初にお小遣いで買ったLPがビートルズの「アビイロード」です)。つまりここに取り上げられている「名盤」はほとんど、同時代になんらかのかたちで少なくとも一回は聴いたことがあるものばかりで、そのことに我ながら少しあっけにとられたのと、やっぱり今でもカーステレオに積んで繰り返し聴いているものが、そうかもはや「名盤」と言われつつあるんだなと複雑な気持ちになったり。

「これがベスト100以内で、これは圏外なのか」という個人的な感慨も覚えないではありません。しかし、かえって自分にとっての「名盤」への愛情が深まる感じもあったりする。その屈折した味わいもまた得難いものがあります。ちょっと意外だったのは、ローラ・ニーロへの評価が予想以上に高かったこと(しかし私がもっともよく聴いたローラ・ニーロの「スマイル」は圏外。「スマイル」が出た1976年当時は、明らかに人気に陰りが出ていたと記憶します。最近になって再評価が進んだのでしょうか?)、そしてランディ・ニューマンへの評価がそれほど高くなかったこと(70年代に区切ったベスト100ですら「グッド・オールド・ボーイズ」が231位だなんて……)など言い出したら切りがない。だからこそこういうベスト100ものは面白いのですが。

 もうひとつ気になっているのは、60年代から70年代、80年代と時代が移るにしたがって、イギリスとアメリカのそれぞれ国の名盤占有率に動きがあるのかどうか、ということです。ぼんやり眺めた感じでは、60年代よりも80年代のほうがアメリカが台頭してきている気配があるのですが、果たしてどうでしょうか。ちゃんと数えてみたわけではないので確かなことは言えません。

 あるいは国力に較べたら、イギリスは老舗としてずっと健闘を続けている、と言えるのかもしれません。また、同じ英語圏とはいえ、なぜカナダがやや陰鬱なところのある突出した才能(ジョニ・ミッチェル、ニール・ヤング、ザ・バンド、レーナード・コーエン……)を輩出してきたのか、といった素朴な疑問もあらためて浮かんできます。

 そして今いちばん恐れているのは、こういった名盤がいま刻々とリマスタリングされて紙ジャケット化されていることです。昔はひと月に1枚LPを買うのがやっとだったのに、今は校了日の深夜の待ち時間にamazon.co.jpをついつい覗いてしまい、いつのまにか発売になっていた紙ジャケット盤を、つい「大人買い」してしまったことがこれまで何度あったことか。中学生時代の自分に申し訳ないような、そしてなんとなく後ろ向きのロック志向に、ある種のうしろめたさも感じてしまうのです。
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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長 松村 正樹


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