Webマガジン「考える人」

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2017年7月6日

名訳は迷惑?(No.726)

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翻訳書のイベントのため、来週10年ぶりに上京する村井さん。滋賀から東京の途中にある、生まれ故郷について。
路上でどろんとした目をしながらシンナーを吸うフィリピン・マニラの子どもたち。青少年鑑別所の写真は目が離せません。
世界的観光ブームの中、ヴェネツィアに観光客が押し寄せ、文字どおりイモ洗い状態に。内田さんが現地取材で聞いた"悲鳴"とは?
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6月26日(月)
大学生の娘が土曜日に、ヒューマントラストシネマ渋谷で「劇場版 嘆きの王冠 ホロウ・クラウン」から「リチャード二世」を見てきて興奮している。ウィリアム・シェイクスピアの史劇作品群に基づいたイギリスのテレビ映画シリーズで、「リチャード二世」「ヘンリー四世「ヘンリー五世」「ヘンリー六世」「リチャード六世」が映像化されている。サム・メンデス監督「007シリーズ」のQ役で名を挙げたベン・ウィショーがリチャード二世をやっててなかなかすごかったよ、なんて聞いているうちに私の気持ちもうずうずしてきて、すでに「ホロウ・クラウン」が配信されているhuluに半年ぶりに加入した。
舞台で見るのがもちろん一番なのだろうが、テレビドラマ化されたシェイクスピアの世界は理解しやすい。ちびちびと深夜にひたれるのは至福の時間だ。
大和和紀さんが「源氏物語」を漫画化した「あさきゆめみし」を思い出す。

6月27日(火)
柴田元幸責任編集「MONKEY」最新第12号の特集「翻訳は嫌い?」、さすがの充実の内容。柴田さんの雑誌でとうとう翻訳が特集された。
柴田さんは自ら「日本翻訳史 明治篇前半」で日本の翻訳の歴史を語り、村上春樹さんと翻訳について二つの対話をしている。特に対談「翻訳の不思議」で、「古びる翻訳と古びない翻訳」について語る部分が読まされる。
柴田さんが名訳と聞いてまず思い浮かべるのは、野崎孝訳ジョン・バース『酔いどれ草の仲買人』、朱牟田夏雄訳ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』、鷗外は美文なら『即興詩人』、スカスカ型なら『諸国物語』。

「……これらに何が共通してるだろうと考えると、さっきの文体という話になるのかもしれません。かならずしもその時代に属していなくて、もしかしたら原文にさえ属していないような独自の声が訳文にあるということ。」

とても興味深い発言。
これ以降にも、名訳はけっこう迷惑なのではないか、という発言があったり、翻訳という行為の意味をもう一度問い直させる刺激的な対話だった。

6月28日(水)
先週の土曜日にNHKのBS1で放映された「“黒幕”バノンの戦い〜トランプ政権の舞台裏〜」を録画で見る。5月23日にアメリカの公共放送PBSで放送されたものが、もう日本で見られた。首席戦略官兼上級顧問スティーブ・バノンとは何者かを問うドキュメンタリー。キリスト教対イスラム教の世界最終戦争がおこるという世界観で生きるバノンは、2011年ごろには将来的にサラ・ペイリンを大統領にすることを考えていたそうだ。移民排斥を求める保守派のシンボルとなる資質を見出して。ペイリンは口説けずに、その代わりに途中から担いだのがドナルド・トランプというわけだ。
いまだに公共放送でこういうものを作れることに、アメリカの矜持を感じる。

6月29日(木)
自宅の最寄りの駅に入ってたシュークリーム専門店ビアードパパが、数年前にココフランという手ごろなフランス菓子屋になり、つい最近そこも店を閉めたと思ったら、再びシュークリーム専門店シュクリムシュクリに。なんでまたシュークリームの店になったのかと思って検索したら、三つとも「麦の穂」という会社の経営なんですね。なんだ、同じ会社で業種を変えていただけなのか。でも店の形態が変わるたびにちゃんと行列が長くなるから、見事な戦略。シュクリムシュクリ池袋店なんて食べログでかなりいい点数だし。

6月30日(金)
ジャズシンガー伊藤君子のニューアルバム「Kimiko sings HIBARI~伊藤君子、美空ひばりを歌う」をしみじみと聴く。美空ひばりへのトリビュートアルバム。コンセプトを見たときは、「ひばりジャズを歌う〜ナット・キング・コールをしのんで」などいくつかのジャズアルバムを出した美空ひばりへの返歌なのかな、なんて思っていたが、聞いてみるとジャズ歌手として美空ひばりの曲を歌うなんて気負いをまったく感じさせない。ただ、歌を歌う。そもそも、伊藤君子さんって、もともと美空ひばりに憧れて歌手を目指した方らしい。美空ひばりは伊藤君子さんの10歳上だから、まさに直撃世代なのか。ジャンルという枠を取り払ってはじめて、見えてくるものがある。
前半は「愛燦燦」「川の流れのように」など美空の代表曲を歌うが、後半はジャズ歌手・伊藤君子が、「慕情」や「スターダスト」など美空の好きだったジャズ・スタンダードを歌う、というちょっと不思議な構成。美空ひばりを通して伊藤君子さんがジャズ・スタンダードを再発見する。セルフカバーでもないし、こういうの何ていうのだろう?
 
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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長 松村 正樹


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