Webマガジン「考える人」

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2017年7月27日

佐藤正午さんのすごさ(No.729)

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翻訳書の著者来日イベントのため、10年ぶりに東京を訪れた村井さん。さまざまな出会いと、そして留守番役を務めた家族の奮闘ぶりは!?
昨年掲載された記事ですが、民進党・蓮舫代表の国籍問題を鑑みて、安田さんご自身が「今こそこの記事を読んでほしい」とツイートしたことから話題に。先週に続いてランクイン。
イタリアの夏休みは6月上旬から! 学校の通信簿は? 夏休みの過ごし方は? そして今年は、楽しいだけではない、寂しさのよぎる夏になりそうだとか。
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7月18日(火)
 先日の加藤典洋さんと上岡伸雄さんとの対談イベントの時に親しくなった集英社のWくんが来社。新潮社のビュッフェで、出版部のSくんと三人でランチ。冷製ラタトゥイユのスパゲティー、ガーリックトーストとコンソメスープつき。

 集英社には社食がないらしい。お茶の水、神保町のあたりでずっと外食というのは、大変そうだ。偏見だろうが、エチオピア、共栄堂、ボンディと、男はランチ、カレーばかりになりそうである。

 自宅から会社までの行き帰りは、ずっとポッドキャストの配信でラジオ日本の『文学賞メッタ斬り!スペシャル(予想編)』を聴いていた。明日の第157回芥川賞・直木賞選考会の予想。今回は110分といつにも増してたっぷりだった。

7月19日(水)
 兼務している「新潮」の新人賞の最終候補を決める会議。「新潮」編集部の編集部員5名が一作ずつ最終候補作の担当になる。数日中に候補者に連絡して、オリジナルの小説であること、重複応募をしてないこと、などを確認して最終候補作とする。(9月7日発売の10月号にて発表する)

 誤字脱字やケアレスミスなどを7月末までに修正してもらって、8月の頭に今回からの新選考委員に送付、9月上旬に選考会をおこなって新人賞を決定する。私も担当に決まった候補者に早速電話をした。

 こういう手順があって、うちの新人賞から、
佐川光晴中村文則青木淳悟田中慎弥大澤信亮小山田浩子
滝口悠生高尾長良上田岳弘高橋弘希古川真人鴻池留衣
といった小説家が誕生してきた。新人賞に応募してきた作品の一ページ目をひらいたときの印象、意外と忘れてないものである。

 考えてみたら、自分は上記の作家のデビュー作の第一読者から第五読者までに入っているということだ。
 この日はまた芥川賞・直木賞の選考会の日だった。直木賞をとられた『月の満ち欠け』の佐藤正午さん、もっと読まれるべき小説家だと思っていたので、これで多くの読者が佐藤さんの小説に触れるかと思うとうれしい。物語をまったく予想もつかないところから語り始めて、なかなか全体像を見せない、その構成と文章の技術に毎度舌を巻く。手品のようである。特に前作の『鳩の撃退法』(山田風太郎賞受賞)はすごかった。一時期、伊坂幸太郎さんと佐藤正午さんの話ばかりしていた。

7月20日(木)  大竹昭子さんの異色の連作短編小説集『間取りと妄想』を読む。13篇の小説ひとつひとつの扉に間取り図がついている。その間取りで起きる出来事が次のページからはじまるという趣向だ。間取りはまとまって投げ込みにもなっているので、これを横において眺めながら小説を読んでいると、物語の舞台を俯瞰して眺めているような不思議な気持ちになる。読者が神の視点を獲得したような効果が生じるのだ。

 窓のない一室で新聞の三面記事に熱中する男女を描いた「仕込み部屋」。シンメトリーの部屋で育った双生児を描く「ふたごの家」。「どちらのドアが先?」「家のなかに町がある」なんて、タイトルだけでそそるものがある。

 面白い試みだと思って奥付を見たら、初出は「Webでも考える人」のライバルのひとつ、亜紀書房ウェブマガジン「あき地」ではないか! なるほどウェブマガジンだと間取りものせやすい。いいアイデアだなあ。やるなあ。

7月23日(日)
 NHKでイギリスドラマ「ダウントン・アビー」最終第6シーズンの最終回を見る。

 ドラマの舞台は1912年から1925年のイギリス、ヨークシャーの架空のカントリーハウスであるダウントン・アビーで、エドワード朝時代以降の貴族クローリー家とその使用人たちの生活を描く。ロバート・アルトマンの「ゴスフォード・パーク」の脚本家で、自身も伯爵家の子孫として生まれたジュリアン・フェロウズが制作・脚本をつとめるが、これがとにかくすばらしい。貴族の世界と使用人の世界の描き分け、次第に電気が普及し貴族文化が衰退していく生活の細部の変化の書き方(女性たちの髪型や服装の流行がつぎつぎと変わっていく)、いたずらに煽情的にならない抑えた描写、タイタニック沈没事故、第一次世界大戦、スペイン風邪の大流行、初の労働党政権の発足といった歴史の事件の組み込み方、いずれも見事だった。シーズンを重ねるごとに、主要なキャストの降板が相次ぎ、話に無理が生じてくる英米のドラマが多いなか、「ダウントン・アビー」はそれも少ないほうだったように思う。ラストは少し甘めではあったが……。

今月、同じくイギリスドラマの「シャーロック4」も放映されているが、「ダウントン・アビー」と同時に見終わってしまうのは惜しくて、「シャーロック4」にはまだ手をつけてない。
 
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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長 松村 正樹


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