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Superfly ウタのタネ

初めましてSuperflyです。

こうして、表現の場をいただけてとても嬉しいです。
実は表現者のくせして、考えを言語化するのも、歌詞を書くことも、こうして文章を書くことも、とても苦手だし下手くそです。
それなのに、不思議。
私の人生、言葉と向き合ってる時間が長い。
そして、またしても書くというご縁をいただきました。

これから先、新しい自分に出会えると信じて、不安ながらもこの言葉の世界に飛び込んでみようと思います。

Superflyとして活動して13年ほど経ちました。10年以上続けてると、それなりに 変化も進化もしてきたつもりですが、みなさんのイメージするSuperflyは、一体どういうものなのでしょう。昔は特に、パワフル!とか、声量すごい!強くてポジティブ!とか、アスリートのようなイメージを持たれることが多かったように思います。

確かにそうですよね。ロックチューンを歌う時なんて、すごい顔して歌うし、ライブ中はじっとして歌うことができず、ステージ上を右へ左へ無駄に駆け回っていたし、身体全体で表現しようとするあまり、マイクを持っていない方の腕は鳥のようにパタパタ羽ばたかせながら歌う。そして声量もある。
自分の声の大きさに私自身が驚くくらいです。本人がびっくりするくらいだから、見たり聴いたりしてくれる人たちはどう感じてるんだろう。

パワフルなイメージを持たれやすい私ですが、実は歌を歌っていない時間、ステージに立つ時間を取り除いた暮らしをしてる時の私は、別人に近いかもしれません……。

基本的にコミュニケーションをとるのが不得意で、怖がりで家好き。大きな音は苦手で、喋り声はとても小さいです。レストランで食事してても、周囲の人の話し声や食器の触れ合う音などに、私のモゴモゴした声は完全にマスキングされています。そういう意味で個室の存在はありがたい。誰かに声をかけられるから……なんて理由ではなく、小さな声が届くからです。個室は私の味方。そして、少人数が好き。
今となっては、こんな冴えない自分を好きでいられてますが、つい最近までコンプレックスの塊でした。
もしかするとそれを払拭したくて、パワフルで、元気よく、を装っていたのかもしれません。

ということで、小心者の私が人前で歌うなんてことは、本当は向いてないんです。

ツアー前や、TV出演の前になると、とにかく腰が重くなる!(笑)失敗したらどうしよう……歌詞間違っちゃったらどうしよう……声が続かなくなったらどうしよう……とか。キャリアを積めば積むほど、アクションを起こす前に心配事だけが山積みになって、膨れ上がるその大きさに怯む。そして私の脳みそはフリーズしてしまう……。本番になったらいい意味で諦めがついて、マイナスだったエネルギーは全てプラスのエネルギーにひっくり返る。
とにかく、振り子のように感情が大きく揺れるんです。
デビューからの日々、正直「辞めてしまいたいな……」という気持ちが、何度も何度も頭をよぎってきました。
でも……何故か辞められないんです。
弱音は何度も吐いたことはありますが、誰かに引き止められて、説得されて続けてきた、というわけでもありません(多分)。

お仕事がたまらなく大好き!という方は、天職と言われる仕事に出会えたということなんでしょうね。
好きだから頑張れる、とても理想的な働き方で羨ましい。
でも仕事って、みんながみんな得意なことをやってるわけじゃないですよね。好きだけでやってる人も少ないと思う。
他人から見れば、私の仕事も得意なことを見つけて続けているように映っていると思うのですが、実は、ほとんどのことが苦手なことばかり。

ではなぜ、こんなにも大変に思うこと、私には不向きだな……なんて思うことを、わざわざ続けているんだろう。
そもそも何で歌ってるんだろう。
時間ができると、自分に問いかけてみるんです。
考えはするけど、明確な答えがあるような、ないような……。

私が幸運だったのは、驚くほど身体が頑丈だということ。そして、両親から声帯という繊細な楽器をプレゼントしてもらったということです。私の歌声は子供の頃から太く伸びやかで、歌うには良い条件が揃っていたと思います。
これは先天的なもので私の努力ではない、というところが内心複雑なところですが……(苦笑)
何も考えずに歌ってる時は、とにかく気持ちが良かった。人の曲でもいい。自作のデタラメ英語みたいな曲でもいい。いやいや、むしろ言葉なんてない方がいい。例えばラララ~♩とか、ア~♩だけで、言葉にならない想いをメロディに託して、声を身体中に響かせるだけで、心がフワッと軽くなり、何かが空中に溶けるように消えて、癒えていくのがわかるんです。
でもこの”楽器”を気持ちよく鳴らせば、誰かを感動させて心に伝わる歌が歌えるかというと、そうではありません。

大切なのは、「伝える力がある」かどうか。
潜在的には気づいてたけど、このポイントを自覚したのも、つい最近。

デビュー前からスタッフに勧められて書くようになった歌詞。ミュージシャンやスタッフとのコミュニケーション。
歌う、というとても感覚的でシンプルな行為のために、心の中をさらけ出したり、説明や意思表示が必要なのです。歌に言葉なんてなくたっていい。なんて思ってた私にとって、デビューしてから直面した現実はもう本当に苦痛の日々……。
普段も自分の話をするのが苦手で、特に人の話を聞くのが苦手な人とのコミュニケーションなんて、翌日まで引きずるほど疲れるのに、伝え合うって、なんて面倒なんだ!!人間だって動物なんだから、テレパシーでも使って感じ合うことはできないものなのか!と思うこともあります。

とはいえ、殻に閉じこもって孤独に浸りたいわけではありません。
伝わらない、心がすれ違うというのは、むしろ私にとって一番悲しい事。
初めて人前で歌って、拍手をもらった時のあの痺れるような感動。
私という存在を許してもらえたかのような温かな喜び。
全く違う人間だと思ってた誰かと、心と心が一つになれる。
なんて素晴らしいことなんだろう。

素晴らしいとわかってるからこそ、叶わないと苦しい。

両親からは、声帯という気持ちを伝える手段を与えてもらったけど、私はまだまだ、ちゃんとした歌を歌えていないような気がする。
伝える力を持つことが出来て初めて、両親からもらったプレゼントをほんとうに活かせるように思うのです。

伝えるということ。それは今までもこれからも、私のテーマなのかもしれない。

そんな風に考えていた矢先、このエッセイのお話をいただきました。
私は、あれこれよく考えます。そして、何かを発見したり、気づいたりするのが大好き。生きてる!って感じる!
今までは、心の奥の方にひっそりとしまったままにしていましたが、日々感じたことをこうして言葉にしてみます。
伝えることに、真正面から向き合ってみようと思います。

ふ~。この原稿を書くのでさえ、何日もかかってしまった。
でもこれが、心と心が繋がるための「伝えるということ」なのであれば、なんていい時間なんだろうと思う。

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「考える人」から生まれた本

  • 春間豪太郎草原の国キルギスで勇者になった男

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

Superfly越智志帆

スーパーフライ おち・しほ 1984年2月25日生まれ。愛媛県出身。2007年デビュー。代表曲に「愛をこめて花束を(2008)」「タマシイレボリューション(2010)」「Beautiful(2015)」「Gifts(2018)」など多数。シンガーソングライターとしてのオリジナリティ溢れる音楽性、圧倒的なボーカルとライブパフォーマンスには定評があり、デビュー14年目を迎えてもなお表現の幅を拡げ続けているアーティストである。今年1月には、ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を越智志帆自らが手がけた4年半ぶりとなるオリジナルアルバム『0』をリリース。Superflyの新章を実感させる仕上がりとなった。Superfly公式サイト


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