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Superfly ウタのタネ

2020年12月1日 Superfly ウタのタネ

まさかのアンチエイジング

著者: Superfly越智志帆

歌いたくてウズウズしていたので、オンラインライブ、やってしまいました!
今年はインプットの年と決めていたので、締め切りを設けずのんびり曲を作るつもりでいましたが、コロナで状況は一変。
ステイホーム期間に在宅勤務の方が増えたことで、世間はお家で一生懸命お仕事したりしてるのか~と思うと、私にできることはなんだろうと考えるようになっていました。
インスタグラムでくだらない写真をアップして笑ってもらおうとしたり、「Together」という曲を作って配信したり、ありがたいことにミュージックステーションに出演させていただいたり。世界を明るくするぞー! と謎の正義感に燃えて、活動的で熱かった(笑)。
ナチュラルハイ状態だったかもしれません。

その活動スイッチに拍車をかけてくれたのが、今年の2月から始めたボイストレーニング。
通い始めてすぐコロナが流行し始めたので、週に一度のリモートレッスンに切り替わりましたが、これがかなり集中して声と向き合うきっかけとなって、本当に良かった。

昨年はツアーも大成功したし、ツアー期間中の私の声帯は病院の先生に褒められるくらい綺麗な状態をキープできていたので、これといって大きな問題は抱えてないと思っていました。ただ、ここ数年、ロック曲やハイトーンを連発するような曲を歌う時に、声にパンチを出そうとして体に力が入るようになってました。頭の中のイメージでは、ハイトーンを出しても野太く艶のある声。精神はとても自由で開放的で、心の中は恐れなどなく、自信に満ち溢れている。ところが実際の私の声は自分のイメージよりも細くなっていて、それを補うことに必死でした。頭の中は「ちゃんと声が出るかな……」と不安や心配ごとでいっぱい。声帯の異常はないし、これは声のせいじゃない、全て私のメンタルの弱さからきてるものだ! と思いこんでいたのです。
以前もエッセイの中で書きましたが、普段の私はインドア派で、声も小さく臆病ものです。
全然ロックしていません。ロックって本当はパワフルな人がやるもので、小心者である私のメンタルが曲に追いついていないのなら、精神を強くするべきだ!と思いたち、自己啓発本を読んだり、夢に向かって頑張ってる人のドキュメンタリー番組を見てモチベーションを上げたり、ストイックに運動したり、瞑想したり(笑)あれこれたくさん試しました。
そんな心の強化期間を経て、なんとなくメンタルコントロールができるようになった気がした昨年末。やっぱり声に元気がなく、細い。相変わらず、イメージしてるような声のパンチには程遠い。もっと力強く、自由に歌える方法はないかと心の中がモヤ~っとしておりました。

年が明けてからも悩みは消えず、ついにシンガーの友人にポロっと弱音を吐いてしまいました。すると友人はモヤモヤを吹き飛ばすように「ボイストレーニングのいい先生いるよ! 先生に話しとくよ~絶対良くなるよ! アッハッハ~」と明るく話してくれたのです。そして数日後には「レッスンのキャンセル出たらしいから行ってみる?」と連絡をくれました。なんていい人! いつもだったら新しいことを始めるのに躊躇してしまう私も、これは直感力の強い友人が繋いでくれた素敵なご縁のような気がして、迷わず指定されたスタジオへ向かったのでした。どんなレッスン内容なのか、どんな先生なのか、ほぼ、ノーインフォメーション。頭で考えず直感を信じて動いてみるって、なんだかワクワクします。

スタジオに入ると先生はとても歓迎してくださいました。どうやら年末の音楽番組での歌唱を聞いて、今の私が抱えている問題点に気づいてくれていたようで、声を回復させたいとおっしゃってくださいました(涙)。そしてレッスン初日にして、これまでの日常でやっていた間違った練習法をズバリ指摘してくださったのです。

まずはライブの本番前はどういう練習してる? と質問があり、「ハミング練習」と「母音練習」です、と答えました。

歌詞ありで歌ってしまうと声帯への負担が出てしまうことは自覚していたので、「ハミング練習」でセットリストの全ての曲を歌います。ハミングで歌うと高い声の響きが良くなるのと、音程が取りやすくなるのです(ぜひカラオケでどうぞ)。

それが終わると、「母音練習」。全ての曲を母音だけで歌うのです。たとえば「愛をこめて花束を」、だと「あいお おえーえー あーあああお」です。これは低音を響かせる感覚でやってました(これもぜひ、カラオケで)。こちらもセットリスト全曲。

「セットリスト全曲」

……ここに間違いがあった。

私は失敗を恐れて何度も何度も気がすむまで練習してしまう傾向がある。練習せずに失敗して「あの時やってなかったからだ!」と思いたくない。この恐怖心から、気づけば自分の曲ばかりを練習し(人の曲など歌う余裕がない!)、そうするとだいたい同じような音域ばかりを何度も歌うことになる。結果、酷使した声帯を硬くしてしまっていた。ということが発覚したのです。

子供の頃は運動量も多く、自然と全身の筋肉をバランスよく使えますが、大人になれば運動量も限られ、意識しないと使わない筋力はすぐに衰えて硬くなってしまう。体の一部である声帯を動かす筋肉も使わなければどんどん衰えるようです。
それが私がここ数年悩んでた声の細さの原因でした。
要するに、老化してました(笑)。36歳、ショックーーーーー!

ということで、原因とやるべきことがハッキリしたので、あとはコツコツ頑張るのみ。
声の若返りに必要なのは刺激&緊張。練習曲には、ハワイアン・クラシック・ジャズなどの、いつも歌わないようなジャンルやフレーズ、日本のポップスでは使わないような複雑なスケールを使って筋肉に慣れない動きで頑張らせる。さらに、課題曲のキーを変えながら「こんな高さでこんなフレーズ歌うの?!」と刺激を与えます。そして、慣れてきたらまた新しいメニューに変えて、常に新しい緊張感を与える。とにかく筋肉が怠けないように動かすらしい。

他にもたくさんのメニューがあり、週1時間のリモートレッスンを録音し、次の週まで音源に合わせて毎日練習。喉は休ませることも必要なので週に一度は必ずオフ。ヤッホー!
これが1週間の課題です。
とにかく動かせて休ませて、そしてまた動かせて……を繰り返し、超回復の原理で強くするのですが……

キツイ……(笑)。正直、こんなに毎日練習したことはありません(笑)。
でも弱音を吐いてる場合でもないくらい衰えていたので私は頑張ったのです! 何故ならば、初日のレッスンで現状で鳴らせる音域の幅をチェックしたところ、2オクターブと11半音しか出すことができませんでした。これまたショック。他のアーティストの方と比べてもかなり狭いらしく、年内で4オクターブを目指すことに……!

もっと楽しく歌える日々を夢見て、雨の日も風の日も、低音から高音まで響かせ続けた! 気分的に憂鬱な日は、踊りながら歌った。クローゼットの洋服をひたすら畳み直しながら歌ってみた。家中のいろんなところを拭き掃除しながら歌ったり。運転中に高音で歌って歩行者に驚かれたこともあった! 練習を楽しめる工夫をたくさんしました。

こうして修業を重ねた結果、メキメキと声が太く蘇ってきたのです。2オクターブしか出なかった音域も、やればやるほど広がる。まるで、光を求めて、少しずつトンネルを掘るような地道な作業。だけど確実に手応えがある。もっともっとトンネルの先を見たい。

レッスンを始めてから数ヶ月、今度は喋り声が変わってきた。自分の声が気持ちよく響くようになって、話すこと自体が楽しくなってきた。さらに修業を続けること数ヶ月、ついにトンネルが貫通。明らかに歌いやすくなった。声の立ち上がりが良くなり、ロック曲も、ハイトーンもパワーがある!!!! そして、音域は目標を通り越して5オクターブ近くまで出るようになった。

その瞬間、自分の心の中で「ライブがしたい!」という熱い気持ちがこれまで以上に湧き上がり、気づけばスタッフに提案していたのです。
ライブしたい! なんて自分から提案するの、人生初です(笑)。声と一緒に、メンタルまでポジティブになってしまいました。

心と体は繋がっています。

私にとって、声は親友のような存在。
親友が元気がないと共鳴してしまいます。今は親友が元気を取り戻してくれて安心したのか、心の中に閉じこもってたポジティブなエネルギーが外へと飛び出したような気がしています。

声を救ってくれた友人と先生、本当にありがとう。
そして私の歌を聞いてくださるお客さんにも、心からありがとうです。

やっぱ自分の声が世界で一番好きだな!(笑)
大好きなものが自分の体の中にあるって、とてつもなく幸せ!!

アンチエイジングってあんまり好きじゃなかったけど、撤回。
声だけは、アンチエイジングの精神でいきます(笑)。

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

Superfly越智志帆

スーパーフライ おち・しほ 1984年2月25日生まれ。愛媛県出身。2007年デビュー。代表曲に「愛をこめて花束を(2008)」「タマシイレボリューション(2010)」「Beautiful(2015)」「Gifts(2018)」など多数。シンガーソングライターとしてのオリジナリティ溢れる音楽性、圧倒的なボーカルとライブパフォーマンスには定評があり、デビュー14年目を迎えてもなお表現の幅を拡げ続けているアーティストである。昨年1月には、前作から4年半ぶりとなるオリジナルアルバム『0』をリリース。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を越智志帆自らが手がけ、Superflyの新章を実感させる仕上がりの作品となった。Superfly公式サイト


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