シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

Superfly ウタのタネ

今日は、私の中で答えが出ていないことを書いてみようと思います。
コロナ禍で書き始めたこのエッセイ執筆も、はや一年が経ちました。いつも答えを持って書き始めているかと言われるとそうでもなく、書いているうちに答えらしきものが見えてきて、お、ここが着地点か??? と何となくしっくりきたところで締めさせていただいております。
いつもと同じだから安心して良いよ、と自分に言いたいところですが、今回はいつもより自信がない。いつもより答えがない。謎のプレッシャーを感じております。
いわゆる見切り発車ですが、行き先を決めず、ものは試しに筆を走らせてみようと思います。

答えが出ていないこと……。それは旅についてです。
主に海外旅行についてです。旅の楽しみ方って本当に人それぞれ。まるで体質みたいに違うし、旅の中で、どんな心の動きがあったのか、思い出話を聞いてもわからない。
これが正しい旅の楽しみ方です! というものはなく、その時盛り上がっていたら正解なんだろうけど、ついつい自分らしい旅の手応えを追求したくなるというか、次は、さらにいい旅にするぞ!! そんな風に決意するのです。旅は旅友と行くことが多いので、くだらないことを話しては爆笑しっぱなしで、間違いなく楽しい。ただ、場所は確かに移動したけど、東京での生活と同じ安心感に包まれてる気がして、異国の地で孤独の風をしっかり浴びる旅もいいのかな、なんて思うこともあります。

自分なりの旅がしっくりこないのは、単純に旅経験が少ないからなのかなぁ。
越智家は農家なので、とても忙しく&父が出不精というのもあって、家族旅行の思い出がほとんどないのです。記憶にあるものといえば……キャンプ。以上。
夏休みになり、いとこが遊びに来ると、出不精な父はキャンプに関して前のめりな姿勢を見せる。

そう……何を隠そう我が父は、釣り大好き、焼けた肌は筋肉ムキムキ。正真正銘の、海の男なのであります。

宿泊はホテルではなく……浜辺でテント。または海沿いの施設。食事は美味しいレストランなどではなく、潮でベタつく肌に煙にまみれながらのバーベキュー。遊んだり、感動したりするものといえば……海。以上。ストイック、ストイックすぎる。
ある年の夏(おそらく小学5、6年)、恒例の海の生活に飽き飽きしていました。あまりにも暇。これといってやることもないので、諦めて一日中海に浮かんでいました。海の上から海に沈む夕日を見届け、それなりに感動して地上に戻った瞬間、全身が痛い! 日焼けのレベルを通り越して、火傷。お風呂に入るのも、パジャマに袖を通すのも、何をするにも全身が痛い。しかも私は日焼けした後に赤くなって可愛い〜みたいな感じではなく、焦げ茶色になってしまうタイプです。男顔なので、見た目がたくましすぎる。それ以来、海と日焼けは恐怖です。

小さい頃は、自然に触れるよりも、知らない街を見たかったし、他の地域の文化に驚きたかったんだと思います。大人になった今、海を眺めながらお酒や食事を楽しむことが大好きになったし、最高の贅沢だと思えるけど(実は私も海の女なのであろうか……)、当時は「知らない世界」が気になって仕方がなかったのだと思います。四国という島国だから、余計に知的好奇心が刺激されていたのかもしれませんね。

高校生になり、バイト代が貯まるとたまに友人と大阪に遊びに行ったりしてました。船で……(笑)。移動手段も宿泊方法も家族に相談したことはなく、全部自分たちで手配していたのです。誰にも聞くことができないので、 自分で答えを出す。気合い一発でした。私ったら、日焼けしていなくても、なんだかたくましいですね。そうしてなんとか辿り着いた大阪は、同じ国なのに言葉も街の空気も違う。10代の私にはいろんな意味でいい刺激だったと思います。その頃から、次の旅は◯◯しよう! と旅の方法のアップデートを考えていたので、旅の楽しみ方の答え探しは随分前から始まっているようです。

知らない世界を見たい! と思う私ですが、いざ出発となると急に不安になるんです。たまに、なんらかの事情でキャンセルにならないかな、なんて思ったりします(笑)。なったらなったで嫌ですけど!

そう言えば最近、こんな会話をして自分でドキッとしたことがあったんです。 知人に「志帆ちゃんって海外旅行好きだよねー?」と聞かれ、「あ、そうですねー好きですね、 結局」。こんな返答をしてしまったのです。少し沈黙があって、私も知人も「結局????」と驚いてしまいました。完全に無意識で「結局」と言ってしまったけど、無意識だからこそ、これが私の本音なんだと思います。

遠いところに旅するってなんだか怖いんです。
長時間の飛行機が揺れそうで怖いから? 見知らぬ土地に行くから? 英語苦手だから孤独を感じる? チコちゃんと離れ離れになるから?(それはかなりある) 想像できる理由は多々あるのですが、実は私が強烈に怖いと感じる瞬間は、現地に行ってGoogle Mapで現在地を見たときなのです。興味本位で地図を見て、日本からこんなに遠く離れた場所にいるんだ!? と自覚した途端に、地球の巨大さや海の広大さに圧倒されてしまうというか……自分が塵みたいにちっぽけに感じて、風が吹けばすぐにでも飛ばされてしまうんじゃないかと思うほど、心細くなる瞬間があるのです。
数年前、人生初の遠征旅行となるスペインを訪れた時に強烈に感じました。これまで感じたことのないホームシックのような感覚を味わったのでした。自分の住んでいる場所から離れることで、同時に地球の大きさ、宇宙の無限を感じてしまうようで、その恐怖をじんわり感じたまま旅をしているので、帰国すると即脱力です。お土産を眺めながら思い出に浸り、怖かったけどちゃんと楽しかった! ということを確かめてホッとするのです。数ヶ月経ったら、さて次はどこに行こうかな~なんて想像します。怖いけど、好きみたいです、結局。

実はこの恐怖心、海外だけではなく国内を移動してる時にもあります。ツアー中にも時々感じるので、興味深い感覚だなぁと観察しています(少し冷静)。

しかし……私の知的好奇心はじっとしていられないようです。遠い国が怖いくせに、昨年はじめ、よりによってモルディブに行ってしまいました。ここはGoogle Mapで確認したくないくらい、 現地にいるだけで怖かった(笑)。海の中にポツンと置かれた小さな島の中だけで過ごすのですが、波が荒れようものなら島は消滅しそうな勢いです。これまたじんわりと恐怖心を抱きながらの毎日でしたが、そこで私を癒してくれたのはホテルのスタッフの人たち。レストランは島に3つしかないので、ある程度滞在してると顔なじみになっていきます。

ほとんどのゲストはカップルや家族で、食事が終わればお部屋に戻っているようでしたが、私は旅友とレストランの閉店まで入り浸っていたりして、気づけばスタッフの人とおしゃべりするようになっていました。もちろんこちらは片言英語。これが楽しい。そもそもなんでここで働いてるの? とか家族はどこにいるの? など、気になることを質問攻めです。
仲良くなったスタッフは、まだ23歳で、学生時代に知り合った女性と結婚して、奥様は妊娠中とのこと。島のホテルには住み込みで働いていて、奥様と会えるのは月に数回。なんとも愛おしそうに話すので、会えなくて寂しいんだろうなと思うと泣きそうになりました(笑)。いい話を聞いたのもあるけど、片言しか話せなくても、こうやって現地の人とお話ししてると旅行特有の恐怖心が和らいでいきます。素敵な景色を見て感動することでも、買い物を楽しむことでも、美味しいものを食べることでもなく、人と会話することで自分の存在を確かめられる、誰かがいるから、私がいる。自分が塵のようで、風で吹き飛ばされそうだと思っていたけど、ちゃんと地に足をつけて日本にいるときと同じように存在してるということを感じるのです。すごく嬉しい気持ちになりました。

そういえばロンドンに一人旅した時も、電車に乗り間違えて駅員のおばさんに怒られたのですが、訛りもきつくてうまく聞き取れず何度も説明してもらったんです。その時も、私が状況を理解できた時、さっきまでイライラしてたおばさんが両手を上げて喜んでくれて、妙なコミュニケーションだけど心が通じ合った気がして、嬉しかったな。

さて、行き先を決めずに書き始めましたが、これが私の旅! という答えには辿り着けませんでした。でも答えがないからこそ私の知的好奇心は刺激されるのかもしれません。 答えがない、というのは、無限の答えがある。ということなのかもしれませんね。 これからも私の知ってる場所と知らない場所を行き来しながら、自分なりの旅を見つけたいと思っています。

それより、いつ海外旅行できるんでしょうね???
私の次の目的地は、イタリア!
早く行きたいな~~!

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考える人とはとは

 はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

「考える人」編集長
金寿煥

著者プロフィール

Superfly越智志帆

スーパーフライ おち・しほ 1984年2月25日生まれ。愛媛県出身。2007年デビュー。代表曲に「愛をこめて花束を(2008)」「タマシイレボリューション(2010)」「Beautiful(2015)」「Gifts(2018)」など多数。シンガーソングライターとしてのオリジナリティ溢れる音楽性、圧倒的なボーカルとライブパフォーマンスには定評があり、デビュー14年目を迎えてもなお表現の幅を拡げ続けているアーティストである。昨年1月には、前作から4年半ぶりとなるオリジナルアルバム『0』をリリース。ほぼすべての楽曲の作詞・作曲を越智志帆自らが手がけ、Superflyの新章を実感させる仕上がりの作品となった。Superfly公式サイト


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