春号で雑誌のリニューアルをいたしましたが、おかげさまで多くの皆様のご支持をいただくことができました。書店での売行きも、定期購読の新規お申し込みも、私たちの当初の予想を大きく上回りました。厚く御礼申し上げます。
 雑誌はつねに変化を遂げていく生きものです。時代の空気を吸いながら、新しい刺激を取り入れ、生成を繰り返します。それとともに、私たちは守るべき価値観、核とする編集理念を見失わないようにしなければなりません。開かれていて閉じられている細胞のように、誌面のリフレッシュを続けていきたいと思います。引き続き、ご支援をよろしくお願いいたします。
 さて、前号で非常に好評だった武政諒さんのスニーカーのイラストとは打って変わって、今号の表紙は、藤本将(すすむ)さんに夏らしい作品を描いていただきました。谷川俊太郎さんの特集ページについては、担当者から次に報告してもらいますが、昨夏より準備を進めてきた企画です。今夏は猛暑になるという予想が出ていますが、ページを開いただけで、自分が北軽井沢の別荘にいるような清涼な空気を感じます。処女詩集から六十四年、近年ますます注目を浴びる詩人の生活と意見をご味読下さい。
 「いつもは聞かれる側だけれども、一度作家を自分のホームグラウンドにお招きして、こちらからいろいろ質問をぶつけてみたい」という山極寿一さんの呼びかけから、小川洋子さんとの屋久島での対談が実現しました。野生のサルやシカに出会いながら、若き日の山極さんが分け入った豊かな森の中へ―。養老孟司さんの新連載「森の残響を聴く」の訪問先、徳島県祖谷(いや)地方の山の景観とともに、知と視覚の旅を満喫していただければ幸いです。
 ながらく連載していただきました平松洋子さんの「日本のすごい味」は今回が最終回です。細野晴臣さん、村井理子さんの新連載が始まりました。どうぞご期待下さい。(和)

 八月末の暑い盛り。にぎわう軽井沢駅から、車で国道146号線を北上して三十分ほどのところに、北軽井沢の通称「大学村」はあります。緑の鮮やかな、鳥のさえずりだけが響く静かな集落です。小さな古いお家で、谷川さんが迎えてくださいました。
 谷川俊太郎さんの特集をやりたい、とずっと考えていました。「考える人」では、これまで何度か寄稿やインタビューをお願いしていますが、二〇一四年春号の小特集「石井桃子を読む」で子ども、ことば、本についてお話をうかがいました。聞き手は尾崎真理子さんで、わずか一時間あまりとは思えない、濃いインタビューが実現しました。
 これをきっかけに、本づくりを見すえて連続的にお話をうかがう幸運に恵まれました。回を重ねて感嘆することは、谷川さんの無類の率直さです。
 優れた文芸記者である尾崎さんは、毎回膨大な資料を読み込み、尽きない好奇心をたずさえ、いうなれば〝完全武装〟してインタビューに臨むのですが、どんな鋭い問いであっても谷川さんはひるむということがない。「ぼくは言葉を信じてないから」と言いながら、言葉を選ぶ手間を惜しまない。問いもどんどん深まって、ふつう「インタビューの名手」といえば聞き手を指すけれど、受ける側の名手もいるものだ、と感じ入りました。
 北軽井沢の水のせいか、お茶もコーヒーもとても美味しかった。部屋は谷川さん自身に似ていました。機能的で清潔、魅力的な暗がり、いっぱいに詰まった本棚、シングルベッド。居心地よく誰をもくつろがせ、でもひとりのときにもっとも満ち足りていそうな感じ。
 半日にわたるこのときのインタビューを中心に、特集を構成しました。収録していないお話は、いずれ「新潮」でもご紹介する予定です。
 多くの時間を割き、詩を書き下してくださった谷川俊太郎さん、対談に快く応じてくださった望月通陽さんに心からお礼申し上げます。(A記)