この一件は、会社とAIノマドの関係を象徴している。WEB制作会社は、従業員の給料が固定されており、会社の事務所の賃貸もまかなう必要がある。実は、50万円の提示を最終的に35万円まで引き下げてくれたのだが、それ以下では赤字になってしまう。
 一方、AIノマドは、自宅が事務所のことが多く、クラウドソーシングの仕組みで仕事を得て、マイペースで仕事ができるため、5万円という驚くべき金額でホームページのリニューアルを受注する。
 無論、ここに書いたように、納期の遅れや、追加費用といった問題も生じるだろう。だが、われわれは5万円をクラウドソーシングの会社に供託しておき、納品後に報酬が支払われる仕組みなので、金銭的な損害は防ぐことができる。
 WEB制作会社なら50万円、AIノマドなら7万円。我が校の場合、私やM先生がいるので、アフターケアがいらないから、少々、事情は特殊かもしれないが、確実に「会社離れ」とAIノマドの時代がやってきていることを実感した。
 第四次産業革命が進行するとともに、その波に乗った新たな会社が次々と生まれるかもしれない。しかも、わずか数名で立ち上げたベンチャー企業が急成長する可能性が高い。そこで実権を握るのは、AI神官やCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)たちだ。
 また、特定の会社に属さず、肥大化し続けるインターネット上の「仕組み」を使って生存するAIノマドが激増するだろう。
 会社は必ずしも「入る」ものではなく、むしろ「作る」ものであり、あるいは、インターネットを介してAIノマドが「つながる相手」にすぎない。
 いや、そもそも「会社」という概念そのものが変容するだろう。それは通う場所ではなく、自宅にいながらにしてつながる存在であり、しかも、一生、同じ会社とつながっている必要はなく、同時に何百という会社とつながることも可能になる。
 いずれにせよ、われわれが知っているような形態の「会社」は、遅かれ早かれ消滅する。
 もともと、小口の投資を社会から広く集め、事業が失敗したときに特定の個人だけに影響が及ばない、リスク分散のシステムとして始まった会社(株式会社)は、1602年設立のオランダ東インド会社が初めてだといわれる。その後、第一次産業革命の到来とともに、莫大な資本を集める必要が生じ、会社は、国が許可するのではなく、届け出だけで自由に設立できるようになった。会社同士の合併や吸収も頻繁におこなわれ、グループ会社を統轄するホールディングスの仕組みも一般化した。生物と同じように、常に進化し続けてきた会社というシステムは、今後、AIノマドたちのゆるやかな「つながり」もしくは互助組織としてのみ残る可能性もある。

科学予測の8割ははずれる

 ここまで、AI時代についてさまざまな予測をしてきたが、一つ、読者に衝撃の告白をしなくてはならない。
 私は大学の専攻科目が科学史・科学哲学(のちに物理学)だったが、同級生の廣野喜幸くんが、現在、東大で科学技術の歴史を研究していて、過去の科学技術予測の的中率を調べてみたという。彼によれば、さまざまな科学技術予測の8割ははずれてしまう。洗濯機、テレビ、ヘリコプター、ビデオ、8Kテレビ、薬、医療技術など技術が普及するまでの「年限」について、その分野の専門家たちが予測したよりも遅く実現したり、まったく実現しなかったりするというのだ。専門家たちは、自分の分野について、「早く実現してほしい」という希望的観測を持っているらしい。
 えええ? では、ここまで私が書いてきた、失われる職業、生き残る職業、AI神官、さらには「会社の消滅」といった予想は、はずれる可能性が高いのか?
 いえいえ、ご心配なく。8割の予想が当たらないということは、逆に2割は当たる計算だ。そして、その当たる2割は、嬉しいことに、コンピュータ・情報関連の予想なのだ。
 AIもIoTもコンピュータ・情報関連であることは明らかだから、第四次産業革命は、ほぼ確実に到来するし、AIは普及するし、職業や働き方は激変する。ここで私が書いていることの多くは当たる方の2割なのだ!
 いや、読者を引き込むために、衝撃の告白などと、おかしな表現を使ってすみませんでした(反省)。

 さて、AI時代の未来予測が、当たる2割に属しているとすれば、世界が激変するのはほぼ確実だと言える。となると、その世界を生き抜かなくてはならなくなる子どもたちの教育をどうすべきか、という問題が浮上する。それは家族の問題であると同時に、日本という国の15年後の命運を握る問題でもある。
 AI神官、CDO、AIノマドになりたい子どもたちについては、何を学べばいいかは、比較的わかりやすい。そう、彼らは、(数学力に裏打ちされた)超絶プログラミング技能を養えばいいのだ。だが、すべての子どもが(いわゆる)理数系というわけでもあるまい。もし、あなたのお子さんやお孫さんが、どう頑張っても理数系に向かないことがわかったら、AI時代を生き抜くために、いったい何をどうやって勉強すればいいのか。(つづく)