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株式会社はてな・近藤淳也会長×「考える人」編集長・河野通和対談

2016年4月4日 株式会社はてな・近藤淳也会長×「考える人」編集長・河野通和対談

「はてな」の”ドリーマー” 近藤淳也が考える、
「もっとリアルは楽しくなる」。

著者: 近藤淳也 河野通和

河野 まずは、「はてな」の上場、おめでとうございます。

近藤 ありがとうございます。

河野 近藤さん自身は、この「はてな」という“へんな会社”(*)のファウンダーです。会長という立ち位置はどんな感じなのでしょう?*近藤淳也『「へんな会社」のつくり方』(翔泳社)

近藤 いま僕自身は、会長として経営に関わるというだけでなく、新規事業準備室という部署を抱えて新しい事業をつくろうという役目なんです。

河野 近藤さんには「はてな」を立ち上げたときの夢がありますよね。インターネットという技術を使って、情報共有のための便利さをどうやって実現していくか、という。「はてな」の創業は「ITを使って世の中を良くしていこう」というところから始まったと思うのですが、会社となると、当然経営を考えなきゃいけないし、利潤を生んでいかなくてはいけない。夢を追う部分と会社をマネージしていく部分とは役割が違ってきます。経営の部分を社長の栗栖義臣さんたち経営陣と一緒に見ていくことによって、近藤さんは夢を見るほう――「はてな」はどういう会社になりたいか、何を大事にしなければいけないのかという理念の部分――を引き受けていくのかな、と。言ってみれば、地上を少し離れた宇宙人的な視点で会社を見ていくのかな、と。

近藤 すごいうまく言っていただきましたね。それでいいなと思います。

河野 どういうふうに、自分の中の宇宙人性というか、ドリーマーの部分を整理して来られたのですか。

近藤 「はてな」の事業はブログとかブックマークなどユーザーさんに使っていただいているサービスでの広告だけでなく、他社の企業さんのシステムをうちでつくらせていただいたり、サーバーを監視する製品をつくったり、かなり多岐にわたってきています。経営となると、そういったサービスの数々をきちんとバランスよく見ることや、組織に関わる業務などが確かに増えてくるんですよね。

創業のころから、インターネットを使ってたくさんの人がより便利になったり楽しくなったり、生活が豊かになったりするサービスがつくれたらという思いでやってきました。自分自身は、会長という立場と、新規事業準備室を抱えて、引き続きそういう「はてな」の大事な部分をしっかりと育てたり守ったりしていく役割が務められるといいんじゃないかなと思っています。

河野 先日、近藤さんと久々にお会いしておもしろかったのは、「はてな」というネットを使ったコミュニケーション・サービスの会社をやることで、近藤さん自身はかえってリアルな活動に対して最近は興味が向いているとおっしゃったことです。

若い人たちの間では、いま新しい生活ツールとしてスマートフォンが普及しています。今後ますますそうなっていくだろうと思います。

そういう中にあって、近藤さんがリアル志向を口にされたというのがとても印象的でした。おっしゃっていたのは、地方に移住する人や、シェアハウスに入居する人の話でしたが、近藤さんのリアル志向はどういうきっかけで始まったことなのでしょうか。

近藤 先ほどもお話ししたとおり、いま新規事業準備室という部署を抱えて、新しい事業をつくろうという役目もあるなかで、何か新しいことを考えよう、久しぶりにまた何かおもしろいものをつくるぞとしばらく考えていたのですが、今まではインターネットで完結したブログサービスだったり、はてなブックマークだったりという、そういうインターネットの中で完結したサービスをずっとつくってきましたので、当然ながら最初はそういう延長線上であれこれ考えたんですよ。いくつかアイデアは思いつくのですけれども、決め手に欠けるといいますか、ちょっとおもしろいかもしれないけどどうかなというような、体がもうつくらずにはいられないみたいな形になかなかならないところがありました。

どうしてなのかよくよく考えてみると、今ってみんなスマートフォンを見る時間が長すぎて「これ以上まだスマホの画面を見たいんですかね」という根本的な疑問が出てきました。

ひと昔前みたいに、インターネットを使う時間がどんどん長くなっていくという時代はもちろんあったと思うんです。それに比べると、今の人がインターネットに接している時間がこれから十倍になりはしないですよね。すでにスマートフォンに接している時間の奪い合いになっているでしょうし。あとはずっと使い続けるようなサービスというのは、大分出そろってきているのではないかなと。

この15~20年ぐらいの中で、インターネットサービスの充実や、デバイスの進化によっていつでもどこでもインターネットに接することができるということがもはやだいぶ飽和してきた状況なのではないかと思うのです。

では一方で、相対的に実生活のほうもそれぐらい充実したのかというと、案外そっちのほうがこれから豊かにできることがあるのではないかと考えています。

たとえば、今だったらインターネットに自分のブログを開設して自分の考えとか書き込んで、共感してくれる人と出会うなんてことは、簡単に、思いつけばすぐにでもできる環境が整っています。

でもリアルな生活で、自分が住んでいる家の隣の人とどうやって接していますか、接する方法ってありますかと言われると、案外これが難しい。隣人の名前すら知らない環境の中で生活している人も多いんじゃないかなと思いますし、そういう意味では実生活というか、ネットから離れたリアルな生活のほうがもっと楽しくできるという感覚があるんですよ。

撮影:菅野健児

河野 インターネットサービスの会社をやってきた方から、いまのような発言を聞くと、後ろ向きに聞こえるかもしれません。おそらく近藤さんのおっしゃりたいことは、その先を見据えて、いま飽和状態になりかけているインターネットサービスと、リアルとのバランスを取りながら、ではどういうサービスをこれからしていけばいいのか、ということですよね。

近藤 ネットかリアルかという対立軸というか、二元論みたいなものではなくて、どこまで行っても両方使っていくんだと思うんです。リアルな生活が豊かになるサービスだからといって、インターネットは全く不要かというと、そういうわけでもないと思います。リアルな生活においても、インターネットが役に立つ部分というのが必ずあるので、そこは全然自己否定でも何でもないと思っています。

たとえば、最近だとAirbnbみたいな、自分の家を旅行者に宿泊施設として貸せるサービスがありますね。世界中で人気なのでものすごくたくさんの方がそれを利用して、普通の人の家に宿泊するケースが増えていますが、それはリアルといえばリアルですよね。実体としての部屋があって、そこに本当に人がやってきて泊まっていって、鍵を渡して生活の仕方を教えて、帰っていったら部屋の掃除をする。それはすごくリアルなんですが、フランスからやってきた旅行者の人と、日本人の部屋を貸している人が、インターネットがなくても出会えていたかといったら、絶対出会えないんですよね。だから、リアルにすごくしみ出している。

インターネットって、部屋と旅行者みたいな大量の情報をうまくマッチングさせるといった得意な領域がありますので、そういうところはうまくインターネットを使いながら、体験がネットワークでは閉じていないみたいなサービスがおもしろいなと思うんです。

自分自身もAirbnbを使って旅行してみたことがあるんですが、やっぱりおもしろかった。週末に韓国に行って、韓国のホストの方の部屋に泊めてもらったんですが、一人頼れる人がいるおかげで、近くのおいしいお店を直接聞いてご飯を食べることができる。また、普通の韓国人の方の生活の中に入って、「こういう部屋で暮らしているんだな」という実感は、やはりホテルじゃ味わえない。

また、どうしても部屋主に会うときにやはり少しはお話しするんです。そうすると、仕事のことなどについていろいろしゃべりながら、一市民の方と交流ができるのもすごく新しい体験でしたし、そういうのは今までにない旅行の楽しみだなという感じがしました。

そういうことって、昔はできなかったけれども、インターネットがあるからできるようになったことだと思います。

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何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

近藤淳也

株式会社はてな代表取締役会長。1975年三重県出身、京都大学理学部卒。2001年に「はてな」を創業、2014年に代表取締役会長に就任。

河野通和

1953年岡山県岡山市生まれ。季刊誌「考える人」(新潮社)編集長。1978年、中央公論社(現・中央公論新社)入社。「婦人公論」「中央公論」編集長等を歴任し、2008年退社。日本ビジネスプレス特別編集顧問を経て、2010年新潮社入社。


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