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川上和人×小林快次「鳥類学者 無謀にも恐竜学者と語り合う」 (2018年8月1日・於神楽坂ラカグ)

2018年8月23日

川上和人×小林快次「鳥類学者 無謀にも恐竜学者と語り合う」 (2018年8月1日・於神楽坂ラカグ)

第1回 はじめは気に入らなかった

著者: 川上和人 小林快次

 今、恐竜図鑑をひらくと、恐竜たちは色とりどりの羽毛をまとっている。鳥が恐竜の直系子孫であることは、最新の研究の結果、今や定説となっているのだ。
 今回、文庫化された『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』の著者、鳥類学者の川上和人氏と、恐竜学者の小林快次氏は、NHKラジオの「夏休み子ども科学電話相談」の共演でも大人気。その二人が鳥について、恐竜について、進化について、縦横無尽に語り合った。
 チケットが即完売した、サイエンスファンならずとも必見の対談を収録。

川上和人氏
小林快次氏

川上 今回、小林先生に解説を書いて頂いた『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』を出版したのが5年前のことです。僕は鳥類学者として、もう20年くらい、小笠原諸島を中心に鳥の研究をしてきたんですけど、この本を書いていた頃は、古生物学者に知り合いがいなくて、発表された論文とか、ナショナルジオグラフィックぐらいしか手がかりが無かったんですね。だからどれがよい論文なのかも、判らなくて。

小林 僕らは、恐竜の論文は、発表される前から、どのぐらいの信憑性があるか判りますからね。みな知り合いですから。

川上 そこも手探りでした。でも、何より一番怖かったのが、古生物学者の方から「判ってない」と言われることでした。ところが実際に出版してみると、批判がくるどころか……ノーレスポンスだった……。

小林 一番、怖いじゃないですか(笑)。

川上 一切、何の反応もなかったですね……悲しいぐらい。でも、この本の執筆当時から小林先生の本は参考にしていました。一番バリバリやってる恐竜学者といえば、やっぱり小林先生ですから。でも「門外漢がこんな本を出して」って嫌われてるんじゃないかとも思ってました。一応、編集部経由で古生物学者にチェックしてもらって、そう大きな間違いはないだろうとお墨付きを貰いはしましたが。

小林 最初は「川上? 聞いた事ない名前だな」と。それで本を買ったはいいけど読む価値あるのかなと。しばらく積んでおいたことは解説にも書きましたが、本当です。そのうち噂が聞こえてきまして。知り合いも読んだというから「どうだったの?」ときくと「結構、面白いよ」と。……ふーん……ますます気に入らないなと(笑)。そうやって、最初の1頁目をめくるのに時間はかかったものの、めくった後は本当に読みやすかったし、川上さんの想像力が溢れていて、楽しい本でした。

川上 僕は恐竜学の細かいところが判りませんから、そう仰って頂けてホッとしました。小林先生には、本を出した後、編集委員としてかかわっていた雑誌にコラムの寄稿をお願いしたのが最初で、その後、日本鳥学会が主催したシンポジウムに講師として来て頂くための打合せで、初めてお会いしたんじゃないかな。それから呑みに行きましたね。僕、あれからお酒を呑むと蕁麻疹が出るようになっちゃったんで、以来、呑んでないんです。だから最後に呑んだ人は、現時点では小林先生なんです。

小林 今はNHKラジオ「夏休み子ども科学電話相談」の回答者として、3日連続で会ったりしてますよね。

川上 なまじっかな恋人より会ってるんじゃないかという(笑)。

道場破りは恐竜から?

川上 この本を書いた当時のモチベーションは、恐竜が鳥に進化したことを知ることで、鳥に興味を持ってくれる人がもっと増えてくれるといいなというところにありました。当時は、鳥と恐竜の関係については、一般には今よりも知られていなかったですから。鳥類学者でも、恐竜からの進化に興味を持っている人はあまり多くありませんでした。

小林 今では、鳥とワニを研究することで、恐竜を研究するというのは、メジャーな方法なんですけどね。大雑把に言えば、ワニと鳥の中間に、恐竜がいるわけですから。でも恐竜は恐竜で独自に研究するので、鳥の研究者とは重ならないんですよね。

川上 接点がなかなかないし、鳥の研究者に恐竜の話を持ちかけても、その時は面白いねと言って下さるんですけど、なかなか具体的な話にはならない。専門外に手を出すというのは実際、勇気がいりますから。でも今では、恐竜の研究者が、鳥について調べることは珍しくないですよね。

小林 たとえば恐竜の脳を調べるためには、鳥とワニの脳を調べるし、ニワトリをヒナから育てて、その胃の構造を調べている恐竜学者もいます。バリバリの鳥の研究を、恐竜学者がやっている。

川上 僕の知ってる古生物学者も、恐竜の繁殖を研究するために、鳥の卵にあいてる呼吸するための小さな穴、その穴の密度を調べています。穴の数によって親が抱卵するのか、しないのか、その関係性に着目した研究で、これはもう鳥類学の研究そのものではないかと、若干、腹が立つ(笑)。

小林 僕らからすると、こういう研究を、鳥の研究者がやってくれないかな~って思ってるんですよ。そういう論文がないから僕らがやるしかないわけで。

川上 だって鳥は見ればわかるんだもの! どの鳥が、どう卵をあたためるのか、オスがあたためるのか、メスがあたためるのか、あるいは地中に埋めるのかは、見ればわかりますからね。だからそれ以上は進まない……それを恐竜学者は形態からきっちり調べるから、鳥類学者が知らないことを見つけていく……何でうちの鳥たちのこと、君たちが詳しく知ってるんだ!って。

小林 それは、もうそちらがちゃんとやってくれれば。でもそこが鳥類研究と恐竜研究の交わるところであり、新しい学問が生まれるところでもあって、お互いに刺激的でいいんじゃないでしょうか。

川上 ……そうですね。実際、鳥の論文に書いてないことが、恐竜の論文に書かれていることもあるので、先に道場破りをしたのは、あなたたちでしょという気持ちもあって、この本を書いたんです。

小林 恐竜は化石から、骨や卵を元に、形に残っているものから推測するしかないけど、そちらは生きている生物が対象ですから、僕らから見るとやはり面白い発想がありますよ。

川上 実際に生きて動いて、目の前にいますから、生態や行動、鳥が何をやってるかがつい気になっちゃって、そっちにどうしても目がいっちゃうんです。でも恐竜の場合は、化石しか残っていないから、情報が断片的で、でもそこにちゃんと証拠が隠れていたりする。小さな断片から、確かな生態の証拠を見つけ出していくのが、古生物学の面白いところだと思います。

鳥類学者 無謀にも恐竜を語る
川上 和人/著
2018/6/28

ぼくは恐竜探険家!
小林 快次/著
2018/8/1

 

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

川上和人
川上和人

森林総合研究所主任研究員。1年の約1/3を小笠原諸島で過ごし、残りはつくばで鳥と恐竜と幸せについて考えている。左の紳士がティラノに食べられやせぬか少し心配。著書に『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』(技術評論社)、『外来鳥ハンドブック』(文一総合出版)など。(雑誌掲載時のプロフィールです)

対談・インタビュー一覧

小林快次

こばやし・よしつぐ 1971(昭和46)年福井県生まれ。北海道大学総合博物館准教授。アメリカ・ワイオミング大学地質地学物理学科卒。サザンメソジスト大学地球科学科で日本人初となる恐竜の博士号を取得。『恐竜は滅んでいない』『僕は恐竜探検家!』など著書多数。図鑑監修も多い。

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