「考える人」で連載されていた呉座勇一さんの「名ぜりふで読み解く日本史」が、大幅加筆のうえ、『武士とは何か』というタイトルで、10月27日(木)に新潮選書から刊行されます。
義時から家康まで、大河の主役たちが登場!
源頼朝・北条義時から織田信長・徳川家康まで、33人の「名ぜりふ」から、中世武士たちの「アナーキーな本質」を描く瞠目の一冊です。
武士たちが活躍した時代背景、そして彼らがいったいどのような行動原理を持ち、どのような思考様式を持った存在だったのかを、分かりやすく解説しています。
本書を読めば、小栗旬さんが演じる北条義時が人気のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、そして松本潤さんが主演する来年の大河「どうする家康」を、より深く楽しめるようになるはずです。
『葉隠』『武士道』とは別世界?
武士と言えば、『葉隠』や『武士道』で描かれた忠義第一の侍たちを思い浮かべる人も多いかも知れません。
ところが、日常的に戦闘や殺生を繰り返していた中世武士のメンタリティーは、そのような江戸時代のサラリーマン的な武士のものとはまったく異なっていました。
そこで本書では、史料に残された名言、暴言、失言を手がかりに、知られざる中世武士の本質を読みといていきます。そこからは、想像以上にアナーキーで、ワイルドで、イキイキとした、魅力的な侍たちの姿が浮かび上がります。
著者からのコメント
私もNHK大河ドラマは大好きで、『鎌倉殿の13人』は毎回観ていますし、来年の『どうする家康』も楽しみにしています。
ドラマに登場するエピソードや名言の中には、歴史的事実ではなく後世に創作されたものも多いですが、エンタメとして面白がる際には何の障害にもなりません。むしろ、歴史ロマン(歴史ファンタジー)と歴史学の研究成果との差異を意識しながら鑑賞すると、ますます深くドラマを楽しめるようになると考えています。
だからこそ、大河ドラマを楽しむ人たちに歴史学の魅力を知ってもらいたい。本書をきっかけに、歴史の新しい楽しみ方を発見していただければ、これに勝る喜びはないと思っています。
1980年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。専攻は日本中世史。現在、信州大学特任助教。主な著書に『戦争の日本中世史』(新潮選書、角川財団学芸賞受賞)、『応仁の乱』(中公新書、48万部突破のベストセラー)、『陰謀の日本中世史』『戦国武将、虚像と実像』(いずれも角川新書)、『頼朝と義時』(講談社現代新書)、『日本中世への招待』(朝日新書)、『一揆の原理』(ちくま学芸文庫)、『日本中世の領主一揆』(思文閣出版)など。
33人の名言・暴言・失言を一挙公開!
1 源義家「降人というは戦の場を逃れて、人の手にかからずして、後に咎を悔いて首をのべて参るなり」
2 平時忠「この一門にあらざらん人は、みな人非人なるべし」
3 藤原定家「紅旗征戎、吾が事にあらず」
4 平清盛「頼朝が首を切りて、我が墓の上に懸けよ」
5 源義経「関東において怨みを成すの輩は義経に属すべし」
6 源頼朝「日本国第一の大天狗は更に他の者に非ず候か」
7 畠山重忠「謀反を企てんと欲するのよし風聞せば、かえって眉目というべし」
8 源実朝「源氏の正統、この時に縮まりおわんぬ」
9 北条政子「その恩、既に山岳より高く溟渤より深し」
10 北条義時「君の御輿に向いて弓を引くことはいかがあらん」
11 後鳥羽上皇「およそ天下の事、今においては御口入に及ばず」
12 北条泰時「兄の思う所、建暦・承久の大敵に違うべからず」
13 竹崎季長「虚誕を申し上げ候わば、勲功を捨てられ候て首を召さるべく候」
14 金沢貞将「我が百年の命を棄て、公の一日の恩に報いる」
15 後醍醐天皇「朕が新儀は未来の先例たるべし」
16 足利尊氏「この世は夢のごとくに候」
17 北畠親房「一命を以て先皇に報い奉る」
18 一条経嗣「愚身ひとえに諂諛をもって先となす」
19 山名宗全「例という文字をば、向後は時という文字にかえて御心得あるべし」
20 細川政元「正体無き者は王とも存ぜざる事なり」
21 斎藤道三「山城が子共、たわけが門外に馬を繫ぐべき事、案の内にて候」
22 今川義元「自分の力量を以て国の法度を申付く」
23 毛利元就「ただただ三人御滅亡と思し召さるべく候」
24 上杉謙信「信玄ははかりごとある人にて、法師武者を大勢仕立ておかれ候」
25 織田信長「日向守(明智光秀)働き、天下の面目をほどこし候」
26 明智光秀「仏のうそをば方便と云い、武士のうそをば武略と云う」
27 森蘭丸「父が討死の跡にて候えば坂本を賜れ」
28 豊臣秀吉「秀吉若輩之時、孤と成て、信長公の幕下に属す」
29 黒田長政「今になりて、我等が分別、鑓先にあり」
30 徳川家康「万一負け候わば、弔い合戦すべしと人数を揃え上って能く候わん」
31 石田三成「大将をする者は命を全うして、後日の合戦を心に懸る也」
32 真田信繁「忠義に軽重なし、禄の多少によるべきや」
33 伊達政宗「奪うべき時節だに身に授からぬ天下なれば望みなし」
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呉座勇一
ござ・ゆういち 1980年、東京都生まれ。歴史学者。東京大学文学部卒業。同大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専攻は日本中世史。現在、国際日本文化研究センター助教。『戦争の日本中世史』(新潮選書)で角川財団学芸賞受賞。主な著書に、『応仁の乱』(中公新書)、『一揆の原理』(ちくま学芸文庫)、『日本中世の領主一揆』(思文閣出版)、『陰謀の日本中世史』(角川新書)、『日本中世への招待』(朝日新書)など。
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とは
はじめまして。2021年2月1日よりウェブマガジン「考える人」の編集長をつとめることになりました、金寿煥と申します。いつもサイトにお立ち寄りいただきありがとうございます。
「考える人」との縁は、2002年の雑誌創刊まで遡ります。その前年、入社以来所属していた写真週刊誌が休刊となり、社内における進路があやふやとなっていた私は、2002年1月に部署異動を命じられ、創刊スタッフとして「考える人」の編集に携わることになりました。とはいえ、まだまだ駆け出しの入社3年目。「考える」どころか、右も左もわかりません。慌ただしく立ち働く諸先輩方の邪魔にならぬよう、ただただ気配を殺していました。
どうして自分が「考える人」なんだろう――。
手持ち無沙汰であった以上に、居心地の悪さを感じたのは、「考える人」というその“屋号”です。口はばったいというか、柄じゃないというか。どう見ても「1勝9敗」で名前負け。そんな自分にはたして何ができるというのだろうか――手を動かす前に、そんなことばかり考えていたように記憶しています。
それから19年が経ち、何の因果か編集長に就任。それなりに経験を積んだとはいえ、まだまだ「考える人」という四文字に重みを感じる自分がいます。
それだけ大きな“屋号”なのでしょう。この19年でどれだけ時代が変化しても、創刊時に標榜した「"Plain living, high thinking"(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」という編集理念は色褪せないどころか、ますますその必要性を増しているように感じています。相手にとって不足なし。胸を借りるつもりで、その任にあたりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
「考える人」編集長
金寿煥
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