長野県飯田市、友人の元でのびのびと過ごす猫ちゃんと。


 一段と冷え込む夕暮れ時。家路をたどる時間の中で、ちょっとした楽しみがある。民家に挟まれ、ひっそりとした小さな公園で、時々見かける猫の姿だ。
 少し灰色がかったその毛はふっくらとしていて、道端で見かける野良猫たちよりもずっと大柄だ。物おじすることなくどっしりと座り、話しかけるとちょっぴり野太い声で「ま~(にゃ~ではない)」と答えてすりよってくる。どうやら私以外にも彼女に会えることを楽しみにしている人たちがたくさんいるらしい。少し人通りの増える昼間に公園脇を通ると、工事の合間にお弁当をほおばるおじちゃんたちの足元でごろんと昼寝をしている。「こいつあ、人懐っこいよなあ」と、強面のおじちゃんたちの顔も緩む。
 そんな彼女の姿をおさめようと、時々カメラを向ける。ところがいざシャッターを切ろうとすると、するりするりとしなやかに、ファインダーの視界から消えてしまうのだ。結局彼女が納得してくれそうな美しい写りの写真は撮れずじまい。「プロとしてまだまだね!」と何だかからかわれているようだ。
 そんな茶目っ気たっぷりの彼女だが、この頃、なぜだか自分の心が晴れないときほど現れてくれることに気づいた。無くしものをして落ち込んでいたとき、亡くなった友人のことを考えていたとき。公園にふと目をやると、闇夜にふっと白っぽい影が浮かび、彼女がじっとこちらを覗いているのだ。
 しばらく姿を現さないとき、彼女が実は幻だったのではないかと思うことがある。「少し元気になったでしょ? あとは日常に戻って頑張んなさい」と言葉を投げかけるように、しっぽを振りながらまた闇の中へと去っていく彼女の姿を思い出しながら、私は今日も、同じ道を駅へと向かう。

夜によく散歩する公園。昼間に見かけるよりも、猫たちの顔はどこか凛としている。