Webマガジン「考える人」

シンプルな暮らし、自分の頭で考える力。
知の楽しみにあふれたWebマガジン。
 
 

安田菜津紀の写真日記

 3月11日、夕刻の岩手県陸前高田市。暗闇に包まれていく市街地を、小さな灯たちが彩る。「高田に輝(ひかり)の花を咲かせよう」は、今年で三度目の開催を迎えていた。「輝」という文字は、25歳で消防団の活動中に亡くなった菊池勇輝さんの名前からとったものだった。この場も彼の同級生たちが呼びかけたものだった。
 ミラーボールの光の粒を追いかけて、きゃっきゃとはしゃぐ子どもたちの影が駆け抜けていく。時折り海風に揺らぐロウソクの灯を眺めながら、ただじっと佇んでいく人もいる。思い思いの時間を過ごすことが、受け入れられている空間だった。ただそこに確かに共有されていたのが、“悼む”という時間だった。
 日々目まぐるしく、街の風景は変わっていく。けれどもそれと同じ早さで、人の心が前に進むとは限らない。「5年目の“節目”という言葉が響く度に、“もう立ち上がりなさい”といわれているよう」。そんな言葉をこの街で耳にしたことがあった。どんな復興も、どんな街づくりも、“悼み”がなければ脆いものになってしまうはずだ。
 輝き。それは人が集う場そのものであり、これからを照らし出す希望だった。命はこうして、つながっていく。

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―

安田菜津紀

2016/04/22発売

シリアからの残酷な映像ばかりが注目される中、その陰に隠れて見過ごされている難民たちの日常を現地取材。彼らのささやかな声に耳を澄まし、「置き去りにされた悲しみ」に寄り添いながら、その苦悩と希望を撮り、綴って伝える渾身のルポ。

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考える人とはとは

何かについて考え、それが「わかる」とはどういうことでしょうか。

「わかる」のが当然だった時代は終わり、平成も終わり、現在は「わからない」が当然な時代です。わからないことを前提として、自分なりの考え方を模索するしかありません。

わかるとは、いわば自分の外側にあるものを、自分の尺度に照らして新しく再構成していくこと。

“Plain living, high thinking”(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)*を編集理念に、Webメディア「考える人」は、わかりたい読者に向けて、知の楽しみにあふれたコンテンツをお届けします。

*産業革命後に急速な都市化が進むロンドンで、イギリスの詩人ワーズワースが書き遺した言葉。

 

 

「考える人」編集長
松村 正樹

著者プロフィール

安田菜津紀

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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