空の上から。夜が呼んでいる。


 取材したものを持ち帰り、発表の場を頂く度に思うことがある。自分よりもずっと、経験が豊富なジャーナリストたちが同じ場を訪れていたらどうだったろう。より声を広げることができたんではないだろうか。もっと伝わる形に残すことができたんではないだろうか、と。
 そんなことを姉のように慕う人に相談したときだった。「なつきちゃん、大根とバットって、形似てるけど用途全く違うやろ? バットは球打てるけど食べられへんし、大根は球打てへんけど美味しく食べられるやろ? 比べても仕方ないものを比べて苦しむ必要ないねん」。ふふふ、名言やろ?と笑う彼女に、私もつられて笑う。心がふわりと軽くなる瞬間だ。自分の出来る役割に、力を注ぎなさい、と背中を押してもらったように思う。
 言葉は時に、人の心を追い詰め、切り刻むほどの威力を持ちえてしまう。けれどもまた、たった一つの言葉で、越えられる夜がある。何気ない言葉で、「生きたい、生きたい」と心が呼吸しはじめる。
 日々接する言葉の数はおびただしい。まるで巨大なホースから噴き出す水を、直に飲もうとしているようだ、と飛び交い続ける情報を前に思う。だからこそ一度立ち止まり、深呼吸し、心を柔らかくできるような言葉にゆっくりと手を伸べる。そんな温かな場所をこれからもそっと、守りたいと思う。

ふと、君と目が合ったから、立ち止まれた。