イラク北部、ISから奪還直後の村。火薬を積み、自爆テロを計画していたとみられる車が、空爆でつぶれた状態で見つかった。
 

 2003年3月、高校1年生の春休みのことだった。どのチャンネルをつけてみても、乾いた大地と迷彩服が目に飛び込んできた。遠い地で起きていることに、あの時なりに想像力を働かせようと試みた。でもどうしても、実感がわかない。あまりにもテレビ越しに伝わってくる光景が理不尽にすぎるからこそ、これが本当に現実なのかと目を疑ったからかもしれない。
 そんな報道の中で、とりわけ衝撃だったことがある。当時ブッシュ大統領が「民間人の犠牲者数は、想定の範囲内」と話していたことだ。悲しみなのか、怒りなのか、あの時の感情を上手く言葉にできない。戦争だから"仕方ない"かのような積み重ねが、世界の"今"を築いてしまったのではないだろうか。
 昨年、ISから奪還されたばかりのイラク第二の都市、モスルを訪れた。「自分の父さんがひどく殴られていた」「ぼくのおじさんは撃ち殺された」。凄惨な状況を、なかば興奮気味に訴え続ける子どもたちを前に、ただ戸惑った。難民キャンプのソーシャルワーカーがため息をつく。「今は解放された高揚感の中にいる。でもこれが時間が経ち、ふとした瞬間に無気力になったり、逆に怒りっぽくなったり、眠れなくなったり。具体的な症状としてトラウマが表れていくのは、むしろこれからなんです」。
 「隣人はもしかすると、テロリストに加担していたかもしれない」。そんな不信感が至るところに根深く残った街は、ISの兵士たちが去った後にも火種を抱えているように見えてならなかった。ISが去ることも、目に見えた戦火がおさまることも、最終的なゴールではない。時が経つごとに深まってきた互いの間の溝を埋めていかなければならないのは、むしろこれからだ。
 あるとき、一人の女性にはっきりといわれたことがある。「今のイラクの混乱があるのは、イラク戦争があったからでしょう。あの時、アメリカの姿勢を追った日本に責任はないのでしょうか?」今、私たちが取り戻さなければならないのは、"当事者"という意識ではないだろうか。

テント一つで避難生活を送る少年。戦闘がおさまっても、がれきに覆われた街にすぐに戻れるわけではない。
 

 

安田菜津紀 写真展開催

安田 菜津紀 写真展「The Voice of Life 死と、生と」

オリンパスギャラリー東京
期間:2018年4月13日(金)~4月18日(水)
午前11:00~午後7:00 最終日 午後3:00 木曜休館 入場無料

オリンパスギャラリー大阪
期間:2018年5月7日(月)~5月17日(木)
午前10:00~午後6:00 最終日 午後3:00 日曜・祝日休館 入場無料

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